2015/10/11

潮目の変わったキングオブコント

「キングオブコント2015」の生放送中ですが、1stステージ終了時点で、昨年予想した潮目の変化を感じたので、昨年大会(「キングオブコント2014」)についてのこの原稿をアップしておきます。

『シアターガイド』連載「“笑”劇場をゆく」特別編
「キングオブコント2014」

今年もやってきたコントの祭典「キングオブコント」。ファイナリストの枠が8組から10組に増え、ルールも変更になるなど、大きな転換点となった今回、各組のネタを通して浮かび上がった、現在のコントの潮流とは?

九龍 ここ数年の流れではあったけど、今年はいよいよ演劇的なネタが席捲したね。優勝したシソンヌの何がよかったかって、“芝居がうまい”ってことだから。ラーメン屋の店主と客の会話で展開する1本目も、二人がタクシー運転手と失恋した女の人に扮した2本目も、設定と演技がリアルであればあるほど面白い。
(巳) どちらも笑わせるためのオチではなく、短編ドラマの終わりという感じでした。
九龍 客が店を出て事故に遭うところを、舞台からはけたあとに音だけで表現するなんて、もはやチェーホフだよ(笑)。この連載ではああいう演劇に接近したコントに注目してきたけど、いよいよここまできたかと。チョコレートプラネットの1本目も上質なシチュエーション・コメディだったし。
(巳) ポテトチップスの袋を開ける業者と客のやりとりがおかしかったですよね。ありえないこととは分かっていながらも、器具とか、それを扱う手さばきとか、ディテールが豊かで、本当にそういう業者がいるんじゃないかと。
九龍 「(袋を見て)沼津工場だ」とか、言葉選びも絶妙だよね。業者の声のトーンも玄人はだしだったし。逆にここまで演劇的リアリティ重視のネタが増えてくると、バンビーノのネタが新鮮に映るね。
(巳) いろいろなダンスで動物をおびき寄せて狩りをするという、音と動きを重視したネタでした。
九龍 以前はそういうコントも多かったけど、今や異色だもんね。同じ意味で、準決勝で敗退した審査員席のほうに、パンサーや日本エレキテル連合といった旬でキャラクターの立った派手な人たちが座ってるという倒錯も興味深かったね。あと、演劇的リアリティが不足しているために、いまいち面白みが伝わらなかったのが、リンゴスター。
(巳) どういうことですか?
九龍 企業の情報を盗むスパイが、潜入先で社長まで昇進したネタだったけど、まず社長を演じた人が仕事ができる感じに見えない(笑)。演技力が足りないのもあるんだけど、もっと社長が言いそうなフレーズを並べたりしないと、説得力が生まれないんだよね。それこそチョコレートプラネットの「沼津工場」みたいな。そういう奥行きが出て初めて面白くなるネタだから。まだ20代半ばだから、これから磨かれていくんだろうけど。
(巳) ルールが変わったことも話題の一つでしたよね。これまでは全組が2本のネタを見せて、その合計得点を競ってましたが、今年は一騎打ちで勝ったほうが残るという方法でした。
九龍 総得点方式だと、前回のように採点基準が一度ブレると、その後の展開が荒れるから、これはこれでありだと思ったよ。しかもチョコレートプラネットが、宣言通りに一番のくじを引いて、最後まで勝ち進んでいったのにはグッときた。これぞ芸人力って感じで。
(巳) なるほど。また来年の展開が楽しみですね。
九龍 今回がこれほど演劇的だったから、来年はガラリとネタの雰囲気も変わるんじゃないかな。いずれにせよ、期待は高まるね。

(初出『シアターガイド』2015年1月号)