2015/10/15

New Chapter



仕事のギアチェンジを図るため、今年3月に5本あった連載をすべてストップしたのですが(わがままを聞いてくださった各媒体の方々に感謝泣)、ここにきて新しいペースが掴めてきたのと、タイミングよく依頼をもらったのもあって、新連載を2本、始めました。

1本は『文學界』で、伝統芸能についてのエッセイ連載。編集部がつけてくれたタイトルは「若き藝能者たち」です。
第1回となった10月号は落語の立川吉笑、今日ぐらいから並んでいる11月号では講談の神田松之丞のことを中心に書いてます。
いま『文學界』はカバーイラスト担当が元ceroの柳智之くんで、彼が毎号、島尾敏雄や開高健を描いてるのがなんともおもしろくって、その感じにも刺激を受けてます。
第3回はたぶんワンピース歌舞伎について書くことになるかと。

そしてもう1本は『EYESCREAM』で、こちらは小説連載。短篇の連作を重ねていくスタイルです。
いま売りの第1回は「ダクト清掃の男が『火花』を読んだ翌日、研修の新人が清掃中に事故で落下してヒヤッとしたけど、下がカントリーマァムの袋の山だったので助かった」みたいな話です。
編集部がつけてくれたタイトルは「東京小説」で、てっきり「(仮)」だと思ってたら、このままでいいでしょう、とのこと。でもやっぱり次号から変わるかもです。

あとニッポン放送制作のネットラジオ「Music Go Round」でパーソナリティをやっております。毎週火曜20時~22時まで、同じ内容がリピート放送されますので、タイミングあえばぜひ~。
今月は、新譜『世界各国の夜』も最高なビデオくんこと、VIDEOTAPEMUSICがゲストに来てくれてます!

2015/10/11

潮目の変わったキングオブコント

「キングオブコント2015」の生放送中ですが、1stステージ終了時点で、昨年予想した潮目の変化を感じたので、昨年大会(「キングオブコント2014」)についてのこの原稿をアップしておきます。

『シアターガイド』連載「“笑”劇場をゆく」特別編
「キングオブコント2014」

今年もやってきたコントの祭典「キングオブコント」。ファイナリストの枠が8組から10組に増え、ルールも変更になるなど、大きな転換点となった今回、各組のネタを通して浮かび上がった、現在のコントの潮流とは?

九龍 ここ数年の流れではあったけど、今年はいよいよ演劇的なネタが席捲したね。優勝したシソンヌの何がよかったかって、“芝居がうまい”ってことだから。ラーメン屋の店主と客の会話で展開する1本目も、二人がタクシー運転手と失恋した女の人に扮した2本目も、設定と演技がリアルであればあるほど面白い。
(巳) どちらも笑わせるためのオチではなく、短編ドラマの終わりという感じでした。
九龍 客が店を出て事故に遭うところを、舞台からはけたあとに音だけで表現するなんて、もはやチェーホフだよ(笑)。この連載ではああいう演劇に接近したコントに注目してきたけど、いよいよここまできたかと。チョコレートプラネットの1本目も上質なシチュエーション・コメディだったし。
(巳) ポテトチップスの袋を開ける業者と客のやりとりがおかしかったですよね。ありえないこととは分かっていながらも、器具とか、それを扱う手さばきとか、ディテールが豊かで、本当にそういう業者がいるんじゃないかと。
九龍 「(袋を見て)沼津工場だ」とか、言葉選びも絶妙だよね。業者の声のトーンも玄人はだしだったし。逆にここまで演劇的リアリティ重視のネタが増えてくると、バンビーノのネタが新鮮に映るね。
(巳) いろいろなダンスで動物をおびき寄せて狩りをするという、音と動きを重視したネタでした。
九龍 以前はそういうコントも多かったけど、今や異色だもんね。同じ意味で、準決勝で敗退した審査員席のほうに、パンサーや日本エレキテル連合といった旬でキャラクターの立った派手な人たちが座ってるという倒錯も興味深かったね。あと、演劇的リアリティが不足しているために、いまいち面白みが伝わらなかったのが、リンゴスター。
(巳) どういうことですか?
九龍 企業の情報を盗むスパイが、潜入先で社長まで昇進したネタだったけど、まず社長を演じた人が仕事ができる感じに見えない(笑)。演技力が足りないのもあるんだけど、もっと社長が言いそうなフレーズを並べたりしないと、説得力が生まれないんだよね。それこそチョコレートプラネットの「沼津工場」みたいな。そういう奥行きが出て初めて面白くなるネタだから。まだ20代半ばだから、これから磨かれていくんだろうけど。
(巳) ルールが変わったことも話題の一つでしたよね。これまでは全組が2本のネタを見せて、その合計得点を競ってましたが、今年は一騎打ちで勝ったほうが残るという方法でした。
九龍 総得点方式だと、前回のように採点基準が一度ブレると、その後の展開が荒れるから、これはこれでありだと思ったよ。しかもチョコレートプラネットが、宣言通りに一番のくじを引いて、最後まで勝ち進んでいったのにはグッときた。これぞ芸人力って感じで。
(巳) なるほど。また来年の展開が楽しみですね。
九龍 今回がこれほど演劇的だったから、来年はガラリとネタの雰囲気も変わるんじゃないかな。いずれにせよ、期待は高まるね。

(初出『シアターガイド』2015年1月号)

2015/09/22

メモリースティック



そういえばここで紹介するのを忘れていた拙著『メモリースティック』。DU BOOKSより税抜1,600円で発売中でございます。
すばらしい装幀は田部井美奈さん、装画は松井一平さんが手がけてくれました。
そして、オビには敬愛する水道橋博士と佐々木敦さんが一文を寄せてくださいました。
本当にありがたいことです。

『メモリースティック』には2005年から2015年に書かれた原稿が収められており、その多くはまさに佐々木敦さんがオビ文に書いてくださったように、なにかこれから起ち上がろうとするものの萌芽や胎動を捉えるべくして書かれたものです。
実際、この半年だけでも、ここに登場する人たちがおもわぬ繋がり方をして新しい状況を切り拓いていることを容易に確認できるのではないかと思います。

いまの時代に「ポップカルチャーについて書く」ことの意味について考えた本でもあります。
「あとがき」からの抜粋と、紹介していただいた媒体情報なども載せておきます(ウェブで読めるものについてはリンクを貼っておきました)。
なにはともあれ、手にとってもらえたらうれしいです。

※「あとがき」より抜粋

本書をまとめるにあたって、気をつけたことが二つある。

一つは、サブタイトルに「ポップカルチャーと社会をつなぐやり方」とあるが、社会状況やその変化が作家や作品に影響を与えているという見方はしない、ということ。
社会のあり様を追認するだけの作品はつまらないし、また、作品を社会に対する「註釈」に切り詰めてしまうような鑑賞態度もとりたくないと思った。

つまり本書は、ポップカルチャーを見れば社会の動きがよくわかる、ということを喧伝する本ではない。「つなぐ」という動詞は、あくまで受け手の側の課題としてある。
それゆえ、作家自身が社会性を考慮しているか否か、自覚的であるか無自覚であるかなども問題とはならない。作家にとって社会と無縁に自律していると思われる作品やテーマが、それを受け取った誰かにとっては、日常生活のリアリティや、彼や彼女をとりまく社会状況とシンクロしているように感じられることだってあるだろう。むろん、社会と組んず解れつすることで生み出された作品が、単なる現状追認を越えて、まだ見ぬ未来のヴィジョンを引き寄せることだってある。
そのような可能性を、作家たちの意図に関わらず、抽出しようと試みた。

もう一つは、本書全体をリニアに組み立てるということ。
ここに収められた各原稿は、雑誌掲載時には個別に読まれることを想定して書かれたものだが、言及した人物が時期や場所を変えて何度か交錯することで、やはり本人たちの思惑とは別に、テーマや背景となる街の物語浮かび上がってくるような構成を目指した。

いずれも、うまくいったかどうかは読者の判断に委ねたい。

<書評掲載>
『ele-king』(WEB)
矢野利裕氏「社会は変態の夢を見るか
綾門優季氏「『ぴんときた』は、奇跡だろうか?

『新潮』5月号
杉田俊介氏「憂鬱と星座」

『R25』(WEB)
坂口恭平氏「文化の前に交易がある

『ミュージック・マガジン』4月号
柴那典氏「喧騒をドキュメントするように」

『クイック・ジャパン』vol.119
松永良平氏『わかったつもり』を許さない。九龍ジョーの足取りを追え」

『書標(ほんのしるべ)』3月号
書店員レビュー 「硬直した考えを打ち破る新たな世界観が生まれてきている

『週刊朝日』3月13日号
今田俊氏「魔窟のドアをひとつひとつ開けていくスリルと快感

『テレビブロス』3月7日号
橋本倫史氏「ジャンルを越境し、立位置自体も境界を越える」

『HOUYHNHNM(フイナム)』(WEB)
小林真理氏「“一人カルチャー雑誌”を担う書籍

<対談・鼎談掲載>
『SUBPOKKE』(WEB)
九龍ジョー×直井卓俊+森直人「『メモリースティック』にまつわるエトセトラ

『CDジャーナル』3月号
九龍ジョー×松永良平「『メモリースティック』をめぐって

<インタビュー掲載>
『POPEYE』5月号
『KAMINOGE』vol.39