2011/12/31

大往生2011

◆まちがいなく1995年、2001年にならぶ、いやそれ以上に大転換の年として記録されるであろう2011年が終わろうとしている。
まだ生々しすぎてなんと形容していいかわからない年。昨日(12月30日)にも(不謹慎を承知で言えば、まるで滑り込むかのように)親族が亡くなり、つい先ほど最後の挨拶をしてきたばかりだ。大往生だった。

今年はちょっと休みすぎた。流れに身をゆだねたことで結果としてそこそこ原稿を書いたりはしたけど、能動的になにかを動かす局面が少なかった。とくに編集者として。
来年は、今年中から仕込んでいたことも含めてガシガシやっていく所存ですので、なにとぞよろしくお願いします。

◆今年最後のめぼしい原稿仕事など――

・公開中の映画『トーキョードリフター』のパンフレットにてイントロダクションとスタッフ座談会、松江哲明主要作品解説などを担当しています。

・同映画についてはカルチャーニュースサイト「CINRA」でもレビューを書きました。
依頼をいただいた際に「スタッフですけど、いいんですか?」と尋ねたら、「むしろその視点からお願いします」とのこと。ありがたし。WEBで読めますので、こちらからご覧いただければ幸いです。

・ただいま福岡にて公演中の「ロッキー・ホラー・ショー」の公演パンフレットで、宇多丸氏×高橋ヨシキ氏×いのうえひでのり氏によるカルトムービー鼎談の取材・構成を担当しております。

・発売中の『クイック・ジャパン』vol.99では、立川談志師匠についての追悼コラム、園子温監督と入江悠監督の対談、浅草キッドへのインタビュー、高橋源一郎・著『恋する原発』の書評などを書いています。

ホライズン山下宅配便の「あなたが決める多数決で決めるホライズンの10曲の演奏会」(12月18日開催@幡ヶ谷forestlimit)にて配布された小冊子「ホライズン山下宅配便 172曲全曲解説」に、巻頭言として「背筋を伸ばせ、蜂を起こせ!」という小文を寄稿しました。

・新創刊された「世の中とプロレスするひろば」こと雑誌『KAMINOGE』にて、「快楽亭ブラックが語る『立川談志』」という記事を担当しています。
世謝出版イズムで育ったもので、このA5判の雑誌に関われることは無上の喜びであります。

・発売中の『サイゾー』1月号では「死んだテレビの傑作番組」という特集内でテレビドキュメンタリーの紹介記事を担当しています。
編集部がつけたタイトルやキャッチがことごとく物騒(それもまたよし!)ですが、内容はこれまで地味に扱われてきたドキュメンタリー番組に光を当てるというもので、おなじみ松江哲明監督とともに、あの短篇調査団の清水浩之さんにもご登場いただきました。

・発売中のユリイカ臨時増刊『総特集◎石川直樹 エベレストから路地裏までを駆ける魂』にて、年譜の聞き手と、石川さんと祖父江慎さんの対談の構成しました。
提案した漫画も、島田虎之介先生、五十嵐大介先生、大橋裕之先生とそれぞれ三者三様で見事ハマっていて面白いことになっています。

・発売中の『DOMMUNE オフィシャルガイドブック2』では、編集でもがっつり関わったほか(原稿のムチャぶりを受けてくれた書き手の皆様に感謝)、中沢新一氏インタビュー、MC.shirafu氏インタビュー、菅直人元総理訪問記などを書いております。

・発売中の音楽雑誌『ele-king』vol.4の特集「2011年――ベスト・アルバム100枚」にて、坂本慎太郎『幻とのつきあい方』のレビューを書いております。
また、年間ベスト10企画にも参加しておりますので、ご覧いただければ幸いです。

・年末滑り込みで発売された『BUBKA』最新号では、真木蔵人×戸塚宏(戸塚ヨットスクール)対談を担当しています。
「『ハリーポッター』をご覧なさい。学校でメッチャしごいとるやろ?」(戸塚)とか、募金は自ら取りに行けとの内田裕也さんのアドバイスに「フェイストゥフェイス、間違いない」(真木)などパンチライン続出です。

・こちらも発売日は元旦ですがもう店頭に並んでいるであろう『マンスリーよしもとPLUS』では、「『THE MANZAI 2011』最速プレイバック!」と題したカラー5ページのレポート記事を書いております。
優勝したパンクブーブーを含む、ファイナル出場4組の大会直後の声なども掲載してますのでぜひ。

◆トークもいくつか。
・映画『トーキョードリフター』の12月16日の上映後に行われた緊急トークショー「311以後の表現をめぐって」にて司会を務めました。トークに参加したのは監督の松江哲明氏、卯城竜太氏(Chim↑Pom)、坂口恭平氏(建築家)、磯部涼氏(音楽ライター)。
上記リンクの配給会社によるレポートのほか、こちらのサイトでも記事にしていただきました。個人としての実感をベースに書かれているのがうれしい。

・磯部涼氏の新刊『音楽が終わって、人生が始まる』の発売を記念してDOMMUNEにて放送された「実写版『音楽が終わって、人生が始まる』」の司会を務めました。ゲストにやはり『Get back, SUB!』を発売されたばかりの北沢夏音氏。
ニュー・ジャーナリズムの今日的なポテンシャルを計る、自分としてもかなり興味深い話になりました。また続きをやりましょう、なんて話も。
『音楽が終わって、人生が始まる』については、また改めてどこかで書評や記事など書きたいと思っています。

◆では、よいお年を!

2011/12/09

談志が死んだ

◆めっきりさむくなってきました。

談志師匠の訃報については俄に無力感に襲われたりもしましたが、いまはなんとか。
その後、いくつかつぶやいたり、原稿を書かせてもらったりしているうちに、ただもう寂しいなあと。

このブログにも「立川談志」タグがあるので、よかったら覗いてみてください。

◆最近のめぼしい原稿仕事など――

・発売中の「週刊SPA!」のエッジな人々のコーナーで前野健太さんにロングインタビューしています。
マエケンについてはこれまでけっこうな数の原稿を書いてきましたが、意外にもインタビューするのは初めて。スタジオ撮影の写真もむちゃくちゃかっこいいので、ぜひご覧いただければと。

・発売中の『サイゾー』12月号で、「東京フィルメックス」「TAMA CINEMA FORUM」「中国インディペンデント映画祭」の紹介記事を書いてます。
前2つはすでに終了していますが、自分的に記事の目玉だった「中国インディペンデント映画祭」はまさに開催中です。政府の検閲をくぐっていないレア作品の数々。超おすすめです!

・発売中の『シアターガイド』では、今日から始まる「ロッキー・ホラー・ショー」に出演する、古田新太さんと岡本健一さんの対談記事を担当。
公演が楽しみすぎ。演出・いのうえひでのり、戯曲翻訳・高橋ヨシキ(!)という考えうるかぎり鉄壁の布陣!

・ついに発売となったDVD『ライブテープ コレクターズエディション』のブックレットに、「『ライブテープ』について私が知っている二、三じゃすまない事柄」という解説文(18P)を書いてます。
松江監督の原稿取り立て、どの編集者よりもキツかったっす。そのぶんがんばりましたので(なんだその理由)、ぜひ映像だけでなくブックレットもぱらぱらめくっていただけたらうれしいです。

◆トークもいくつか。
・11月26日(土)、下北沢映画祭のプログラム「タナカカツキ×デハラユキノリの珍言しゃべり場」にて司会進行を担当。
カツキ先生とデハラさんの映画に関するノンストップ珍言トーク(120分!)炸裂。カツキ先生のなりきり『Wの悲劇』と、デハラさんのキングコング視点(フィギュア作家だけに!)がツボでした。カツキ先生が小5のときに監督したという8ミリ映画も天才すぎ!

・11月29日(火)、前野健太「友達じゃがまんできない」JOYSOUND×UGAカラオケ配信記念!カラオケイベント「~あなたの『友がま』聴かせてください~」の司会を担当。
友達じゃがまんできないみなさんの背中をそっと押すべく、がんばらせていただきました。
というか、わりと軽い気持ちで考えてたら(すみません!)、すごくいいイベントだった。常々「歌は容器」と言うマエケンだけに、得るものも大きかったんじゃないかと思う。編集されたものが、スペースシャワーTVでも流れるようです。

・11月30日(水)、『UNDERWATER LOVE おんなの河童』の吉祥寺バウスシアター上映のゲストトークに出演。
いまおかしんじ監督&脚本・出演の守屋文雄さん(祝『キツツキと雨』東京国際映画祭 審査員特別賞受賞!)と、ロロ三浦直之さんの邂逅が楽しすぎた! この出会いはのちのち効いてくると思う。そんな期待感、大! です。

◆12月4日(日)、「アーバンソング #04」無事終了。
お越しのみなさま、すばらしい演奏をしてくれたAlfred Beach Sandal、あだち麗三郎、そしてサポートで入ってくださったチェロ奏者・関口将史のお三方、ありがとうございました!
いやもう最高。ビーサンの演奏にあわせて客席の背後からチェロが響いてきた時には、鳥肌たったよ! そして、またもやあだ麗の魔法にすっかりやられてしまった。懐かしさすらあったな。


あだビー with 関口将史による「富士山」もたのしかった〜。

◆と、走り書き完了。

では、2時間後の飛行機で、熊本に行ってまいります!
目的はチェルフィッチュ「三月の5日間」100回記念公演&記念パーティ。
「三月の5日間」は初演を見逃していて、初めて観たのが2006年の六本木Super Deluxeでの再演だった(そんときの日記)。
今回の100回記念公演、早川倉庫というハコがとにかく最高らしいので、たのしみです。



ついでに、坂口恭平のZERO CENTERでも遊んでくる予定。

いやしかし、チェルフィッチュ化する談志――なんてこと、書いたなあ。

2011/11/11

アーバンと富士山と富士山

◆すでに右の告知欄には掲載していますが、次回「アーバンソング #04」は12月4日(日)に開催。
出演者はあだち麗三郎、Alfred Beach Sandalというマジカルなシンガーソングライター二人となります(あだちくんはバックミュージシャンの方も入るかも、とのこと)。

「アーバンソング #04」
2011年12月4日(日)
open 17:30/start 18:00
@スナックアーバン
http://snack-urban.com/
(丸ノ内線「四谷三丁目」4番出口より徒歩2分)

<出演>
あだち麗三郎
Alfred Beach Sandal

<料金>
¥2000+2drink

<予約>
「名前/枚数/電話番号」を以下までお願いします。
urbanuta@gmail.com

ついにあだち麗三郎ですよ。
ここの原稿にも書いたけど、ここ数年、ライブという空間を考える際に参照軸となっていたのは常にあだち麗三郎でした。
最近でこそMC.sirafuの東京インディー無双っぷりが注目されるようになってきたけど、もう一つの極としてずっとあだち麗三郎がいることを忘れてはいけないし、ここにきてシラフとあだちくんの両者が参加しているバンドがceroと片想いであるという濃さ! には驚くばかりなのです。あと、そういや三輪二郎トリオ(三輪二郎、あだち麗三郎、MC.sirafu)ってどうなったんだっけ、とか。

そしてあだち麗三郎のソロライブは、本当に素晴らしいのですよ。
でも動画とかだとぜんぜん伝わらないの、あの空間の生かし方は。だからぜひ体感してほしいと思います。
スナックアーバンも音響空間としていい感じに仕上がってきているので、かなり楽しみなのです。


だるま食堂で片想いの「すべてを」を歌うあだち麗三郎。
MC.sirafu&伴瀬朝彦のアーシーな伴奏とコーラスもいいよねえ。

冒頭であだちくんがゆってる「おとといに、ベース(伴瀬)とドラム(あだち)とトランペット(シラフ)でやった曲」っていう、その「おととい」ってこれ(↓)ね。



そしてあだち麗三郎と対バンしてもらうは、Alfred Beach Sandalこと北里彰久。
こちらも以前にも書きましたが、『One Day Calypso』は、ホント今年出た目覚ましい新譜たちの中でも珠玉の一枚だと思うんです。
先日の江ノ島オッパーラでのパーティ仕様のバンドセットも最高でした。



そう、そのオッパーラのパーティのオーガナイザーでもあったVIDEOTAPEMUSICこと間部功夫くんの展示「富士山と富士山」が今年の3月4日(そうかあれは3・11直前だったのか…)に吉祥寺Ongoingであって、そのオープニングパーティでAlfred Beach Sandalが弾き語りをしたときに、客席の後方であだちくんがグラスをお箸で叩いていてその絡み合った感じがすごくよかったんです。
なもので、二人で対バンをお願いできたらなーと思ったのが、今回のきっかけでもあります。

ちなみに、そのパーティにあだち麗三郎はあだくろ(あだち麗三郎&黒岡まさひろfromホライズン山下宅配便)として出てたんだけど、そのあだくろ結成のきっかけになったのが、上記(↑)の「すべてを」を歌っただるま食堂のライブだったんですよねえ。
だからね、動画をよく見てもらえばわかるけど、黒岡くんも黒岡ジュニア(当時3歳)もだるま食堂にばっちり映り込んでるから。

てなわけで、最後にあだくろ「富士山」をどうぞ。



あ、アーバンソング、前回若干キャパオーバーになってしまったので、行くよ~という方は早めに予約をお願いできれば幸いです! ではではお待ちしております~。

2011/10/30

冬へと走りだそう 再び(と毎年書いてる)

◆ブログをもっと有効活用して感想とかメモを残していこうと思うんだけどなかなか難しくてやっぱりツイッターにちょこちょこしちゃうとかどうするべきかとか、ほんとどーでもいい悩みごとの囚われ人です。

◆とりあえず最近のめぼしい原稿仕事を。

・発売中の雑誌「クイック・ジャパン」(98号)で、藤木TDC著『アダルトビデオ最尖端 ~身体と性欲の革命史~』の書評と、YouTubeのライブ動画撮影者たち(たけうちんぐや岩淵弘樹監督、橋本聡輔くんなど)について書いてます。

・発売中の雑誌「サイゾー」(11月号)で、6・11新宿デモでの参加者逮捕を俎上に載せた森達也さんと二木信さんによる公安警察についての対談と、絶賛公開中の映画『サウダーヂ』を切り口に地方の置かれた現状を考える富田克也監督、開沼博さん、磯部涼さんによる鼎談の取材・構成を担当しています。

・ついに発売となった大橋裕之『シティライツ』第1巻の巻末に収録されている大橋裕之×坂本慎太郎(ex.ゆらゆら帝国)対談の取材と構成を担当しています。
11月14日に新宿ロフトで開催される発売記念イベントで大喜利の司会も務めさせていただきますので、よろしくお願いします。

・11月19日よりオーディオトリウム渋谷にて開催される「松江哲明グレイテスト・ヒッツ1999-2011」のチラシに、那須千里と手分けして企画の概説と上映全18作品の解説を書きました。ぜひお手にとって頂ければ幸いです。

◆ただいま池袋シアターグリーンにて公演中のロロ「常夏」のポストパフォーマンストークに出演させていただきました。
ここんところ「夏」をテーマに作劇を重ねてきたロロにとっての、集大成的作品です。
すばらしかった。

トークでは、この作品の持つ不穏さや妙な白々しさ、伏線の繋がらなさについて話しました。
一見、見た目のポップさにごまかされるけど、クリエイティヴな離人感とシェルターが劇作家・三浦直之の核にあると思います。チェーホフ「かもめ」を演出したいというのも超納得。ぜひ観てみたい。

とにもかくにも不穏でポップで白々しくて愛くるしい不思議な芝居。まだまだ多くの方に観てみてほしい。
12日の夜にもう一度、漫画家のあらゐけいいちさんがトークゲストの回にて司会をさせていただきますので、よかったらぜひ。

◆そして、10月23日の「アーバンソング #03」にお越しのみなさまありがとうございました。
なにより素晴らしい演奏をしてくれた三輪二郎と王舟に感謝!
二人のセッションはボニー・プリンス・ビリーやPAPA Mの枯れ味を越えて心に沁みました。
またどこかの秋に聴きたいな。

2011/10/12

あいどんわなだい

◆山形国際ドキュメンタリー映画祭2011、受賞作品が発表された。
大賞は『密告者とその家族』、最優秀賞に『光、ノスタルジア』。

◆寝起きに飛び込んできた青山景さんのニュースに、どう反応したらいいかわからない。

数年前のこと、小説連載の挿画をお願いした。中野のそば屋だ。作者・峯田和伸からまだ書かれていないその小説の題名を聞いた青山さんは、いいタイトルですねって言ってくれた。

「あいどんわなだい」

早すぎるよ、青山さん。悲しくてやりきれない。

2011/10/11

YIDFF 4日目

◆本日夜、東京に戻る予定。なので午前中は自転車で山形市内を散策など。
ひんやりとした空気が気持ちよい。

山形国際ドキュメンタリー映画祭、4日目の備忘録。

・『星空の下で』 監督:レナード・レーテル・ヘルムリッヒ
冒頭の線路をバイクで疾走するショット(ヨリもヒキもあり)からして、いくらドキュメンタリーは嘘をつくとはいえいくらなんでも作り込みすぎだろ! ってずっこけそうになるが、「ザ・ノンフィクション」や「ビッグダディ」的なものとしてツッコミながら見れば、なかなかに山あり谷あり事件ありで引き込まれる。

・『5頭の象と生きる女』 監督:ヴァディム・イェンドレイコ
いやはや素晴らしい。老翻訳家の高潔なる生き様と端整な画面設計が、ピンと張ったシャツ(実際、アイロンをかけながら翻訳について語るシーンの見事さよ!)のようにびしっとキマっている。思わず背筋が伸びました。

・『アルマジロ』 監督:ヤヌス・メッツ
これまた『星空の下で』と同じく、ここまで作り込んでしまうものかと。とはいえ、舞台が実際の戦場だというのがすさまじい。村民とタリバンの区別がつかないスリリングさなんて、まんま『ハートロッカー』だよ。カット割りも含めて。
柳下毅一郎さんもつぶやいてたが、これを撮らせてしまうデンマーク軍がすごいと言わざるをえない。

◆東京行き新幹線待ちの間にたまさか駅の反対出口を降りてみて気がつく。
山形に来たの、銀杏BOYZ取材で峯田くんの実家にお邪魔して以来だわ。
ぐわと胸をつかむようにして記憶が蘇ってくる。

◆新幹線の車中で中沢新一『日本の大転換』、溝口敦『暴力団』を読了。
リムランド文明たる日本における、原発の過激な無媒介性と暴力団の複雑なインターフェイス機構というエネルゴロジーとかなんとか。どちらも遅からず……というお話。

2011/10/10

YIDFF 3日目

◆もうホントあれだ、映画みて、移動して、映画みて、移動して、夜、飲んで、時間がない。
でも映画みまくって、作り手も観客も一緒くたに飲みながら朝まで議論て、どんな桃源郷かと。

◆でもって山形国際ドキュメンタリー映画祭、3日目の備忘録。

・『密告者とその家族』 監督:ルーシー・シャツ、アディ・バラシュ
どう考えても絶望しかない状況でそれでも生きていく、なんて言葉にすると白々しいが、それでもここまで丁寧に事情に分け入って見せられると、その胆力に心を揺り動かされざるをえない。
主題化こそされていないが、子供たちの躍動を見ていると、カメラで撮られていること自体、彼らにとってわずかな希望なのかもしれない。

・『殊勲十字章』 監督:トラヴィス・ウィルカーソン
「やっべ、死ぬかと思ったけど、運がよかったわ~」っていう親父の微笑ましい雄弁だけでも十分に批評的なのだが、さらにそれを軽くツッコミながら聞く息子たちの存在(画面内の配置が見事!)と、シリアスな資料映像のモンタージュにより、抽象度がぐっとあがる。内容以上に、その堅牢なフォームに感心してしまった。

・『ネネット』 監督:ニコラ・フィリベール
さすがニコラ・フィリベールというべきか、延々オラウータンが映っているだけなのに、まったく飽きさせない。動きと表情だけでいくらでも見てられるし、そこへきて老若男女の来園者や動物園スタッフの声のハーモニー。巧い。見つめ返されるラストショットが小憎たらしいほど。

・『光、ノスタルジア』 監督:パトリシオ・グスマン
圧倒的なメタファーの力! 遠近法のバニシングポイントとなる、ラストのあるシーンに震えた。
劇団ままごと「わが星」のことを少し思い起こす。

・『むかし男ありけり』 ディレクター:木村栄文
木村栄文、マジ収穫。ポルトガルのサンタクルスで晩年の一年あまりを過ごした檀一雄。その足跡を追うリポーターに起用されたのは、なんと高倉健。いかに破滅型の大文豪が切り口とはいえ、九州ローカル局がキー局やNHKに対抗するにはたしかに健さんの力が必要だろう。とはいえ雑誌編集などでも言えることだが、必要と思うことと、口説き落とすことの間には高い段差があるもので、そこを越える足腰にも唸る。

◆連休終わりで帰った人も多いようで、香味庵がいくらかすいてきた(といっても、あいかわらずイスにありつける人はごくわずかという状態だが)。
今宵も面白い人たちにいっぱい会えた。とても懐かしい人にも。

2011/10/09

YIDFF 2日目

◆映画を観て、移動して、映画を観て、移動して、夜、飲んで。

山形国際ドキュメンタリー映画祭、2日目の備忘録。

・『311』 監督:森達也、安岡卓治、綿井健陽、松林要樹
震災から2週間、何はともあれ現場を見なくてはと、ノープランで福島第一原発に接近する4人の監督たち。ガイガーカウンターの値にたじろぎ、慌てて防護服を買い求め、避難区域圏内にまだ残る人影を探す。あげく車のタイヤがパンクしてしまい、福島取材には準備不足すぎると、今度は宮城の被災地へ。被災者や自衛隊員の肉声を少しずつ拾っていく――。
ここに映っているのは、ついなにか画になるものを探してしまうドキュメンタリストの業だ。それを隠さずに「後ろめたさ」(森達也)を抱えたまま見せる、という意図はよくわかる。なのでここで記事にもなっているような物議は、作品にとってむしろ望ましいことですらあるだろう。
だけどこうも思うのだ。その「後ろめたさ」の先にあるものはなんだったのか。被災者に物を投げつけられようが、良識派になじられようが、撮らずにはいられなかったものはなんだったのか。それを炙り出さずして、ある意味、初めからわかりきっている結論である「ドキュメンタリストの業」を再確認するにとどまってしまっていいのだろうか。
そこでポイントになってくるのが、4人の監督の連名作品であるという点だ。
森、松林、綿井の3人が撮った映像を、安岡が編集したという。注意して見ると、役割分担ということもあるのだろうが、3人の作風を知っている者であればそれぞれ持ち味の出ているカットをいくつも見つけることができる。単純に言っても、被写体との距離感が違う。
おそらく3人ともに(生産的な意味での)意識の違いやズレを感じていた。そのズレにこそ「後ろめたさ」を掘り下げる、もしくはその先に向かう契機があったはずなのだ。だが、最終的にそのズレはならされて、1本の作品の中にシームレスに落とし込まれてしまった。
もともと作品化を前提とした撮影ではなかったのだと思う。行きがかり上、撮れてしまった映像を1本に編集してみた。もし速報性を持った内容であれば、現在のヴァージョンでもそれなりの意義はあったのかもしれない。皮肉でもなんでもなく、これほどのドキュメンタリストたちが現地に乗り込んでも、俄には「なにも撮れない」ということ(放射線の存在を示すために何度もガイガーカウンターの値を撮影したカットが出てくるのが象徴的だ)がよくわかるから。
しかし、それにしては時間が経過してしまっている。
「なにも撮れない」からこそ、踏み越えるなり、もしくは迂回するなりして、あの手この手で大マスコミのとれないようなアングルからのアプローチ(もちろん「後ろめたさ」をより掘り下げるという選択だってあるだろう)を考えるのが、むしろ本当の意味でのドキュメンタリストとしての業なんじゃないか。それにかけては海千山千といってもよい監督たちなだけに、正直、物足りなさは残った。

・『相馬看花 第一部 江井部落』 監督:松林要樹
『311』を受けて、松林は福島第一原発の避難区域に継続して赴き、取材を行っている。
避難所や仮設住宅に入りこんだカメラが映すのは、非常事態でありながら、ときに冗長と思えるほど、あたりまえにそこにある生活。カメラはさらに、その生活の背後にある、地域や家族の歴史へと踏み込んでいく。
今後、避難状況の変化とともにサーガのように撮られていくことを予感させる第一部だった。

・シンポジウム「震災と向きあって:監督編」 出席者:安岡卓治、森達也、呉乙峰(ウー・イフォン) 司会:藤岡朝子
冒頭の安岡さんと森さんの発言を確認したところで、移動のため退席。上記参照。

・『川の抱擁』 監督:ニコラス・リンコン・ギル
川辺に現れるモアンという河童のような(?)精霊の目撃証言を聞いているうちに、突如、上流から人間の手や足が流れてきたというおだやかならぬ話にスライドする衝撃!
幻想と現実をすべて包み込む川は、ひたすらに妖しく美しい。

・『祭りばやしが聞こえる』 ディレクター:木村栄文
出てくる登場人物がどれもこれも強烈すぎて、爆笑につぐ爆笑!
九州のテキ屋の大親分にスジを通しての取材ということもあり、いまのテレビじゃありえないようなシーンも続出。なんせ山口組の九州侵攻への対策として地回りヤクザが親子盃を交わすんだけど、ヤクザだと差し障りがあるってんで神農系であるテキ屋の親分に媒酌人を託すのね。その盃事がまるまる映っているという。おまけにイズケンが肩書きテロップ入りで普通にコメントしてたりするし。
RKBに木村栄文あり」。なるほど、これ一作でも十分に伝わってきた。

・『ブリーフ・ヒストリー・オブ・メモリー』 監督:チュラヤーンノン・シリポン
モノローグの語りをどう見せるか。多用されるストップモーションやスローモーションの画が、かえって取り戻せない過去を印象づける。

・『三人の女性の自画像』 監督:章梦奇(ジャン・モンチー)
一時期、日本映画学校の卒業作品によく見られた家族モノのセルフ・ドキュメンタリー風といえばそうなのだけど、自分の裸に母親の語りを映写したり、自分の顔を何度もコピー機でスキャンしたりと、肉体を通したアウトプットが切実かつユーモラス。

◆香味庵にて、『311』が作り手も巻き込んでの激論に。

2011/10/08

YIDFF 1日目

◆早朝より一路、山形へ。といっても、案の定、新幹線を一本遅刻。自由席あいててよかった~。
山形駅につき、まずは観光案内所でレンタル自転車をゲット。これにて、山形国際ドキュメンタリー映画祭が、自分内幕開け。
6日が開幕式だったので、映画祭としてはすでに3日目に突入している。

◆以下、1日目の備忘録を。

・『監獄と楽園』 監督:ダニエル・ルディ・ハリヤント
テロの加害者・被害者ともにイスラム教徒であり、経済的にも同じような環境にありながら、運命のねじれをもたらしてしまう「聖戦」(ジハード)という言葉。
鉄格子越しのテロ実行犯へのインタビュー映像が生々しい。

・『隣る人』 監督:刀川和也
とにかく子供たちの口の悪いこと! かつて児童相談所の一時保護所で働いてた頃のことが微笑ましくもフラッシュバックしたよ。
女の子ふたりが母親代わりの職員にしがみつきながら、お互い「お前のお母さん、もういないんだよ!」「○○ちゃんだって、ホントのお母さんもお父さんいないもん!」と泣き叫び、くるくる回っているうちにみんなケラケラ笑いだしてしまうシーンの凄み。
内容やタイトルから、映画『スティーヴィー』のことを思い出したりも。

・『名前の無い男』 監督:王兵(ワン・ビン)
「狩猟採集生活」なんてェとどうもオルタナティヴな知性が発動したりもするが、ただもうひたすらにプリミティヴ。
被写体との距離感も絶妙すぎる。客観的なんだけど、若干「ザ・ノンフィクション」入ってるというか、ちょっとカメラ笑ってるがなっていう。王兵監督の質疑応答を聞いて、ますますそれを確信。

・『阿仆大(アプダ)』 監督:和淵(ホー・ユェン)
中国の少数民族ナシ族の親子を見つめるハードコア「観察映画」(想田和弘)。遠い過去のようでもあり、来るべき未来のようでもあり。しばし時間の感覚を失う。

・「ワヤン・クリ」(マレーシアの影絵)スペシャルライブ
ふらふらと、トライバルな音楽に誘われて。影絵もカラフルだし、思いもよらずサイケでかっこよい。

・『遊牧民の家』 監督:イマン・カメル
やや乗り切れず。エジプト出身である女性監督のトラベラーとしての視線と被写体のベドウィン女性のたくましい生き方の重ね合わせに、性急なものを感じてしまった。

◆夜、配給会社のKさんと軽く腹ごしらえしてのち、恒例の香味庵クラブへ。
いるわいるわのなじみの顔。また、会いたかった人に会えたり、地元の若い子ともバカ話をしたり。
知人たちとも東京で会うのとはまた一味違う話ができて、したたか酔う。

Nさんが、『サウダーヂ』や『堀川中立売』に出演している維新派の野口雄介さんを紹介してくれた。
関西の活火山。

2011/10/07

Cinema With Us

◆明日から来週半ばまで山形国際ドキュメンタリー映画祭に行くので、仕事を手離れするために大わらわな一日。

◆今年のヤマガタには「ともにある Cinema With Us」というプログラムがあって、ツイッターで柳下毅一郎さんもこんなことを書いていたが、やはり何本かを見ることにはなると思う。

インターナショナル・コンペティションの作品で一番気になっているのは、ルーシー・シャツ監督『密告者とその家族』。

◆『ライブテープ』DVDの発売情報が解禁されました。
12月7日発売。その一週間前となる12月1日から全国限定店舗で先行発売もされるとのこと。
岩淵弘樹監督によるメイキング・ドキュメンタリー映像もついての2枚組。さらに店舗予約限定特典のCDも入手すると3枚組になるデラックス仕様です。

ブックレットには僕が『ライブテープ』について知っていることを書きつくしたつもりですが、岩淵監督のメイキングを見たら、まだまだ新たな事実が出てきてビックリ。特典CD(未聴)なんか聴いた暁には、さらにまたポロポロ出てくんだろうなーと踏んでおります。

◆そして、松江哲明監督/前野健太主演の新たなる映画『トーキョードリフター』も、公式サイトがオープンしました。
僕も現場記録係として、撮影現場当日の模様を記録したり、プレス向けの原稿を書いたりなどしております。こちらは12月10日公開。

と、その前に、2009年の『ライブテープ』に続き、またも東京国際映画祭の「日本映画・ある視点」部門にノミネートされました。
国際的なコンペという場で鋭い批評にさらされるのは、端的に言ってとても喜ばしいことです。

2011/10/05

畑が重機で

◆新宿ピカデリーにて大根仁監督『モテキ』。
ここまでやるか! ってな感じで、ココロもカラダも商売的にも(それは言いすぎ)もはやペンペン草も生えねーよってぐらいに刈り込まれてしまった。

なによりJ-POPエンタテインメントとして最高。
テレビのゴールデンタイムでなぜこれができないのかって話ですよ。
歌番組もドラマもやってるのに!

◆10月23日(日)の「アーバンソング #03」(出演:三輪二郎、王舟)、ぼちぼち予約が入ってきております。あまり広くない会場ですので、確実にご覧になりたい方は、ぜひともご予約のほどよろしくお願いします~。

最新アルバムが出たばかりの、Beirutのスタジオライブ動画がよい。
来年1月の初来日も楽しみです。

2011/10/04

それの表彰不可能性

◆長めの打ち合わせ2本。

まずは午後、某社にて新雑誌(?)の打ち合わせ。
紙のカルチャー誌でいまできることを、いまやるべきことを考える。
12月刊行ってかなりのタイトロープだけど、やるしかないぜよ~。

◆夜、渋谷で「Image.Fukushima」ミーティング。
vol.02の雨宮処凛氏+開沼博氏トーク司会をしたのをきっかけに、実行委員に誘っていただいた。
実行委員には福島の方をはじめ、さまざまな経歴、ポジションの人たちがいて、かなり有意義な話し合いだった。今後もできることを探っていきたい。

これまで「Image.Fukushima」に観客として関わり、思ったのが、映画という形式のアーカイピングの偉大さだ。vol.02ではミハイル・ロンム監督『一年の九日』 と森崎東『生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言』の2本を見たが、よくぞこれらを撮っていたと。
たんに原発イシューということでなく、「映画」というジャンルそのものが土本典昭の『原発切抜帖』のようですらある。

また「Image.Fukushima」の作品群に触れて逆説的に思うのが、“それ”の表彰不可能性のことで(例えば平井玄はトークでランズマン『ショア』に触れていた)。ふと、観劇以来ずっと引きずっている飴屋法水の野外劇「じ め ん」が、その不可能性に対し、剥き出しの肉体と装置であいまみえていたことを想ったりする。

2011/10/03

演劇あたまの生き物4匹

◆午前中に原稿を一本送信。午後からは自転車で九段下~六本木~五反田。
まずは九段下の歯医者でギリギリと。

◆六本木に移動し、デブラ・グラニック監督『ウィンターズ・ボーン』試写。

噂にたがわぬ傑作。
貧困とドラッグの結びつき、寒村の閉塞感には、富田克也監督『サウダーヂ』に通じるものを感じた。
その地味に絶望的な状況をサバイヴする17歳の少女を演じるジェニファー・ローレンスがまた素晴らしく、こちらは『息もできない』のキム・コッピを想起させられたりも。
ただ似てるということでなく、出口のない貧困のリアリティを基したごっついエンタテインメントとしての質感が伯仲している。

淡々と流れるカントリー・ミュージックの調べが、この国でいうところの「あはれ」だった。



試写室で会ったKさんと軽くお茶。

◆五反田のアトリエヘリコプターにて四つ子「四つ子の宇宙」観劇。
四つ子とは岩井秀人(ハイバイ)、江本純子(毛皮族)、前田司郎(五反田団)、松井周(サンプル)の4人による豪華ユニット。作・演出・出演も4人で行う。

オムニバス的なあれを予想していたら、きっちり一本にまとまった作品で、しかもかなりよかった! 「演劇あたま」バリバリだった!
やっぱりね、それぞれ持ち味というか、演出した箇所はわかるもので。岩井秀人のサイコロジーとか、江本純子の「ヤッた」「ヤラない」とか、前田司郎の夢の混淆とか、松井周のMtoF(いや、正確にはMtoMFなんだけど)とか。なのにこの四つ子感! そして言ってはいけない同世代感!

前田さん演出のあるシーンに「こ、これは、タイムリープ!?」とその後のSF展開を想像して興奮してたら(ほら、ちょうど「STEINS;GATE」を完クリしたばかりだし……)、普通に夢とか記憶の話になってずっこけつつも、ようするにおなじみのそんな五反田団テイストに、やはりぐっときてしまう。
あとトークで前田さんが言ってた、「読んだことのあるSFは『11人いる!』と『度胸星』、あと竹宮惠子のやつ」っていうのが、まんますぎて笑った。

会場で会った写真家Iくんと、最近フリーになったばかりの編集者Tさん、Tさんの前の職場の同僚Kさんと五反田で一杯。
IくんとTさんは明日からネパールだという。うらやまし。

2011/10/01

白目のコピーライト

◆連日つづいた取材の疲れか、身体がだるくって夕方まで家でダラダラ。録画しといた「キングオブコント2011」や「クイズ☆タレント名鑑 第2回史上最強ガチ相撲トーナメント」などを消化。
ロバートよかったなあ。キャラ、リズム、構成のバランスで圧倒的。豊穣、ともいう。2700もモンスターエンジンも面白かった。

◆夜、自転車で新宿へ。模索舎・榎本さん企画「『サウダーヂ』と『空族』をめぐる夜」に顔を出す。
富田克也監督と二木信さんには、それぞれちょうど雑誌で取材をしたばかり。
取材でもちょろっと聞いた『サウダーヂ』撮影裏話が最高。アブなすぎてぜったい書けないけど。

トーク終わりで横川シネマの溝口さん現る。溝口さん現るのはいつもこんなタイミング。早朝の新幹線で広島に帰るという。
そのまま打ち上げにも流れたかったが、原稿があるので(そもそも、いくつかは富田さんや二木さんに取材したやつだ)、ぐっとこらえて帰宅。

『サウダーヂ』公開直前にオーディオトリウム渋谷で開催される空族特集、柳町光男の『旅するパオジャンフー』がすげい見たいのだけど、その日はKUNIOの「エンジェルス・イン・アメリカ」予約してしまった罠。なにせAIA、第一部と第二部合わせて7時間越えだもんなー。

◆久しぶりに「ワールドプロレスリング」見てたら、ヒデオ・サイトーが永田に「オキテ破りの白目」だって。バカバカしくていいや。写真で見せたいところだけど、スポナビさん逆だった

2011/09/17

私は知らない



◆9.11新宿デモで記録した寺尾紗穂さんの歌「私は知らない」(with 大熊ワタル)です。
警察の過剰警備ともとれるプレッシャーと理由の不鮮明な逮捕(寺尾さんの機材を管理していた方もデモ中に逮捕されてしまいました)により、現場はかなり混乱していましたが、それでも、いやそれだからこそ、寺尾さんの“小さな声”が、喧噪を切り裂くような静寂としてダイレクトに響いてきました。

2011/08/26

秋の夜長のアーバンソング

◆都会のスナックでたしかな歌を聴きながらグラスと耳を傾けるライブイベントこと、アーバンソングの第3回を10月23日(日)に開催します。

「アーバンソング #03」
2011年10月23日(日)
open 17:30/start 18:00
@スナックアーバン
http://snack-urban.com/
(丸ノ内線「四谷三丁目」4番出口より徒歩2分)

<出演>
三輪二郎
王舟

<料金>
¥2000+2drink

<予約>
「名前/枚数/電話番号」を以下までお願いします。
urbanuta@gmail.com

過去2回、すばらしいミュージシャンの方々(豊田道倫、藤井洋平a.k.a.まめッこ、高城晶平&MC.sirafu、松倉如子&渡辺勝 ※敬称略)に出演していただいてわかったのは、ライブ空間としてのスナックアーバンの意外なポテンシャルで。とくに歌を響かせることにおいては、かなりのものがあると思います。

今回出演いただくのは、秋の夜長にぴったりのSSW、三輪二郎と王舟。
枯れた声の向こう側にどこかアメリカーナな砂埃を舞わせる二人の歌は、どんなふうに響くのでしょうか。
二人によるコラボレーションも披露していただく予定です。

・三輪二郎


・王舟


なかなか狭い会場ですので、ご予約は早めが吉かと思われます。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

2011/08/21

なつやすみはつづく

◆いくらか暑さもやわらいできた。
「最近なにやってんの」とひさしぶりに会った友人たちから聞かれ、「なつやすみ」と答える。
人生二度目のなつやすみ。一度目は03年頃にいただいた。
今回もずいぶんぐうたらしている。あともう少しだけつづけさせて。

◆最近の原稿仕事など。

・現在、パルコ劇場で絶賛上演中「クレイジーハニー」のパンフレットで、作・演出の本谷有希子さんと、主演の長澤まさみさん、リリー・フランキーさんによる鼎談を担当しています。トークライブハウスが舞台ということで、長澤さんの例のモテキ撮影時の話や、リリーさんのプラスワンいい話なども収録。
先日、公演も拝見させていただきましたが、いやもう、面白かった。本谷有希子やりやァがった出来。トークライブハウスで繰り広げられる現代の神話だと思いました。

・発売中の「クイック・ジャパン」にて、小説家・樋口毅宏さんのインタビュー、大野更紗『困ってる人』の書評、そして話題の女子プロレス団体・アイスリボンについてのコラムを書いております。
樋口さんは元職場の先輩なんですが、まさかこうやってインタビューをする日がくるとはなあ、と感慨深いものがありました。

・発売中の「サイゾー」では、平野勝之監督「監督失格」、庵野秀明監督「ラブ&ポップ」、劇団ポツドールという3つをカルチャー欄にて紹介しています。このコーナー、新作と旧作をリンクさせつつ混ぜて紹介するという試みをしていて、書くほうとしても面白いです。
また、アーティスト・市川孝典さんのインタビューも担当。市川さん、作品もさることながら、久々にブッ飛んだ人物で最高。その片鱗がうかがえる記事になったかと思いますので、ぜひ。

・『DOMMUNEオフィシャルガイドブック-1ST』(幻冬舎)に、五所純子さんと一緒に中村うさぎさんの聞き手を務めた「実写版『狂人失格』」や、裏方を担当した「都市型狩猟採集生活 第6回」(坂口恭平×鎌仲ひとみ×飯田哲也×磯部涼)のテキストバージョンが収録されています。

◆「FREEDOMMUNE 0」中止の件は本当に残念でしたが、その判断は支持したい。
夕方、会場に着いたときの異様な空気と強風、まとわりつくような湿度が忘れられない。
直後に中止の報。宇川さんの「誰に強制されたわけでもない。僕が選びました」という言葉と表情が、無念を滲ませながらも力強かった。
その後、拡散する不思議な雨宿りも楽しく。トークブースから配信のみ行われた快楽亭ブラック師匠の「SM幇間腹」は神々しく。
リベンジの機会を、心より期待しています!

2011/07/31

揺れる時代の

◆19日から24日まで九州~沖縄と回ってきた。
九州では坂口恭平くんを訪ね、熊本のZERO CENTERへ。
沖縄では、那覇の沖縄大学にて恩師・野本三吉と再会。さらに、その沖縄大学に講演しにきた写真家の石川直樹くんや映像民俗学者の須藤義人さんらと夜の那覇を堪能したり。
他にも、多くの出会いがあった。
これからなにか実を結びそうな予感がしている。


●新政府首相こと坂口恭平とZERO CENTER


●那覇の栄町で見かけた、妖しい美脚

◆24日、沖縄から帰京した足でDDT両国国技館大会へ。
面白かった! 大のオトナが頭からっぼで楽しめる、最高のエンタテインメント。
08年につくらせていただいた高木三四郎さんの自伝『俺たち文化系プロレス DDT』中で、高木さんは「夢は両国国技館。あくまで過程にすぎないけど」と語っていた。それがもう三回目だし、しかも次は日本武道館進出ですよ。シビれるわ~。

◆最近の原稿仕事をば。

・発売中の雑誌「サイゾー」のカルチャーページにて、「揺れる時代の身体表現」と題して吾妻橋ダンスクロッシングからアイスリボン、映画『田中さんはラジオ体操をしない』までを合わせて紹介するというアクロバティックなことをしています。よかったらぜひご覧ください。

・公開中の映画『PEACE』(想田和弘監督)の公式パンフレットにて、「ドキュメンタリー映画を撮る理由」と題した想田和弘×松江哲明対談の取材と構成を担当しています。
『PEACE』はもちろんのこと、ぜひ想田監督の新刊『なぜ僕はドキュンタリーを撮るのか』とも併せて読んでいただければ幸いです。

◆それにしても今月はせわしかった。
でも仕事もなんとか乗り切れたし、被災地(宮城)、九州、沖縄と、いまこの時期に回れた意義は大きかった。

◆まだ見てない方がいたら、ぜひ。

2011/07/16

被災地ボランティア

◆7月11日から14日まで被災地ボランティアに行ってきた。
社会福祉協議会のボランティアセンター経由で、活動場所は宮城県東松島市。
阪神淡路大震災のときも発生から同じく3~4ヵ月で現地に入り仮設住宅の訪問ボランティアをしたので、似たような心持ちでいたら、あのときとはぜんぜん状況が違っていた。
やはり津波の被害が大きすぎる。

内陸のほうは瓦礫や土の撤去も進み、生活の息づかいも感じさせるが、ひしゃげたガードレールや半壊の家屋などところどころに残る津波の爪痕が痛ましい。
行ったのが平日ということもあり、元気な子供たちが目に付いた。
しかし車が大曲浜付近に出たところで息を呑む。
瓦礫以外なにもない光景。腐臭。
この日もまだ警察が行方不明者や遺体の捜索を行っていた。

作業はひたすら側溝のヘドロ掻き出し。
これがなかなかの重労働で、滝のような汗を流しながら、500ミリペットボトルを30分に1本消費してしまう。しかも自分より非力そうな女子が率先して動くため、なかなか休むこともできない……。
被災者の方から差し入れていただいたガリガリ君のありえない美味さよ。


●2日間で3キロも痩せさせてくれたマイ側溝

いくつか仕事も持ち込んでしまっていたのだけど、ほとんど手をつけられず、毎晩9時にはぐっすり就寝してしまった。

帰りはいったん北上し、石巻市へ。
石巻港近辺の壊滅度が凄まじい。とくにニュース映像でも見ていた日本製紙やJR貨物の工場の姿にはカタストロフィを感じざるをえなかった。
瓦礫の撤去もまだまだ。その上、すでに山のごとく積み上がっている一時置き場の瓦礫をどうするかもまだ不明とのこと。
コンスタントに響く重機の音が、かえってその作業の途方もなさを伝えていた。

◆もし東京近辺在住で被災地ボランティアに興味がある方がいたら、受け入れ状況などここのサイトがまとまっていてわかりやすいです。

「ボランティア」って言葉につまずきのある人もいるかもしれないけど、そんなセンシティヴな人からしたら拍子抜けするぐらい身の丈なノリとストレートな作業が待っているので、あまり深く考えずに行ってみるのもアリかと。
そもそもこっちの事情なんて知ったこっちゃないくらい人手を必要としているのも事実だと思うので。

2011/06/23

ついに禁断の…

◆アーバンソング第二夜、および快楽亭ブラック師匠@DOMMUNE、そして土曜のほにゃららパーティに起こしのみなさま、ご協力いただいたみなさま、本当にありがとうございました。すべて首尾よくいきましたのも、みなさまのおかげです。
今後ともなにとぞよろしくお願いします!!

こういうレポートはうれしいですね。

◆最近の原稿仕事をば。

・TOHOシネマズで買えるシアターカルチャーマガジン「T.」(2011夏号)で、想田和弘監督と松江哲明監督による対談を担当しています。「ドキュメンタリー映画」をめぐるかなり濃ゆい内容を1ページにぎゅうっと詰め込みました。

・発売中の「クイック・ジャパン」(2011年8月号)で想田和弘監督の最新作『PEACE』のレビューと、GWに開催された"30代女性の祭典"こと「スカートの裾まつり」のレポートを書いております。

・ばるぼらさんとTAXIMさんが編集したimoutoid追悼冊子「6月のimoutoid」にコメントを寄稿しました。その中でも書きましたが、商業誌でもっとも早くimoutoidの音源を紹介できたことと、追悼文をMJのものと並べさせていただいたことは、雑誌屋としてできる彼への最大限のリスペクトでした。安らかに。
ちなみに冊子は6月25日(土)に六本木SuperDeluxeで開催されるimoutoid追悼イベントで配布されるそうです。

◆以下、ツイッターより抜粋(ついに禁断症状が……)

2011年06月09日(木)
遠藤賢司vs前野健太@晴れたら空に豆まいてに来ました。ロックの日に実現した"エンケン 対 マエケン"の客入れBGMはなぜかダニエル・ラノワ。コンセントレイションってやつか。まもなく開演

2011年06月10日
エンケン対マエケン、数年前に「健祭り」で大橋裕之先生が演った紙芝居のほぼ実写化だった。エンケンの咆哮がすべてという。デカい音はデカく、小さな音は小さく。変わらないなあ。前野健太「東京 2011」は「東京ワッショイ」(昨夜はやらなかったが)のアップデートでもあるということに気づいた

大宮浩一監督『無常素描』試写。3・11から1ヶ月の被災地を、タイトル通りテロップもBGMも使わずスケッチ。被写体との関わりが一方的な「神の視点」が気になったが、この早さで上映する覚悟は感じた。怯えながら生きていく、という玄侑師の言葉が残った



2011年06月12日(日)
表参道ヒルズで開催中の箕浦建太郎川島小鳥の展示へ、原宿の交差点でばったり会った元・小悪魔ageha編集部Nくんを連れて。ミノケン画の天使っぷりがパない! 小鳥くんが「未来ちゃん」でブレイクしましたが、ミノケンにももっと光が当たってしかるべき、と思っているのは僕だけじゃないはず

ミノケンに勧められたワインで酔ってしまったので、てんやで酔い醒まし。これからVACANTの豊田道倫さんの初小説「東京で何してる?」刊行イベントへ向かいます。川本真琴さんとがっつり演るらしく、楽しみです

天丼食って余裕かましてたら(開演時間を間違え)、カンパニー松尾さんによるドキュメンタリーの前半を見逃す。HMV渋谷での「東京で何してる?」から、僕の企画させてもらったアーバンソングでの「2011」の映像で締め。ただいま佐内正史さんを交えてのトーク中。岩淵くん、司会がんばれもっと!

豊田道倫+川本真琴、大人のデュエットでした。この組み合わせでもっと聴きたい。ちなみに川本さんの考えてきた二人のユニット名は「ミチコ」。豊田さんはずっこけてましたが。ラストは三輪二郎を呼び込んでのアコースティック・ザーメンズ。これがまた素晴らしかった。三輪二郎の多幸感が加速している

2011年06月15日(水)
坂口恭平から電話。東京に着いたそうな。なーにが「やっぱいいね、東京は!」だ。というわけで、僕も担当編集として裏方で関わってきましたDOMMUNEの『都市型狩猟採集生活』、明日が最終回です。よろしくお願いします。

2011年06月17日(金)
昨夜の坂口恭平「都市型狩猟採集生活」、見てくださった方ありがとうございます。最終回(模様替えして番組は続きますが)だというので、『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』という本がどういう背景でできたのかを編集者として少しだけ話させてもらいました

2011年06月19日(日)
アーバンソング、リハーサル中。スナックにスティールパンが持ち込まれています。日本、いや世界スナック史上初(日本以外にスナックがあるのか不明ですが)のことかも

2011年06月20日(月)
昨夜「アーバンソング」第2夜にお越しの皆様、ありがとうございました! 最高の演奏をしてくださった松倉さん、渡辺勝さん、高城くん、MCシラフ氏にもホント感謝です。最後のドリカムセッションは楽しすぎでした。第1夜に続き、またも素晴らしい夜でハードル上がってますが、次回は8月頃に!

快楽亭ブラック師匠@ドミューン、ご覧の皆様、会場にお越しの皆様、感謝です! ドキュメンタリー落語「立川談志の正体」と、ブラック落語十八番「イメクラ五人廻し」の二席をお届けしました。師匠が某席亭と揉めた理由がくだらなすぎて最高。次回は秘蔵映像も交えてぜひ!

2011年06月22日(水)
アトリエヘリコプターにてハイバイ「七つのお祈り」観劇。特殊公演というか、工場見学会チックなオムニバス公演。ハイバイのエッセンスを堪能。日常の細かい(時にはしょぼい)サイコロジーがおかしくも愛おしい。「たのしい新生活」は、笙野頼子『居場所もなかった』でしたな。「幻想管理サービス」

2011/06/17

束の間の二日間

◆都会のスナックでたしかな歌を聴きながらグラスと耳を傾けるという贅沢なイベント=アーバンソング、今週日曜です。
これまで体験してきたライブのよい点や、この原稿のエッセンスなどを自分なりに研究して詰め込んでいますので、出演者をご存じない方もぜひ~。

「アーバンソング」#02
2011年6月19日(日)
open 17:00/start 18:00
@スナックアーバン
http://snack-urban.com/
(丸ノ内線「四谷三丁目」4番出口より徒歩2分)

<出演>
高城晶平(cero)&MC.sirafu
松倉如子&渡辺勝

<料金>
¥3000(2ドリンク込)

<予約>
「名前/枚数/電話番号」を以下までお願いします。
urbanuta@gmail.com

◆告知つづきであいすみません。
翌20日(月)には震災直前の3月7日以来、久々に快楽亭ブラック師匠がDOMMUNEに出演。僕もお供をさせていただきます。
師匠が地震に遭ったときの話(そのとき大須演芸場は…!?)や、「原発寄席」などについてもいろいろ聞いてみたいと思います。もちろんブラック落語もたっぷりお届けしますので、ぜひご覧いただければ幸いです。
スタジオ生観覧もありますので、会場へもぜひ。

◆と、その前に、明日もビッグイベントが……。

◆このメドレー(↓)最高。音と画が豪快にずれてるのがまた双葉双一っぽくていい(たんに映像圧縮の問題なんだろうけど)。『涙の小鳥』は名盤だよなあ。

2011/06/05

Jさん&豪さん

◆昼、「Jさん&豪さん」こと杉作J太郎さんと吉田豪さんのトークイベント@新宿ロフトプラスワンへ。
プラスワンの告知に「諸事情により、今回でしばらく開催はないかもしれません」なんていう思わせぶりな記載があったので、これは見届けねばと。
なにげにお二人がタッグでトークイベントを始めるきっかけとなった2005年夏の高円寺あづまフェスティバルから見ているのです。

遅れて会場に入ると、ぼくが戦隊モノ史上最高のかわゆさだと思っているハリケンブルーこと長澤奈央と杉作さんが共演している映像を流しながらトーク中。
「ハリケンジャー」毎週見てたはずなのに、杉作さん出てたの気づかなかったわー。

「諸事情」というのは、杉作さんがアニメ研究所の立ち上げ(?)のため松山に帰省するというもので、落ち着いたら東京でも活動を継続するとのこと。少し前に豪さんが予言していた「サブカル実家帰りブーム」がいよいよ顕在化しはじめたとも言えるのかも。
そのへんの話は杉作さんの新刊『杉作J太郎が考えたこと』にも詳しく書かれているそうです。

あとはもう、ほぼしょーもない下ネタと雑談のみで埋め尽くされた男の理想郷。
ただただ楽しかった。
かつて「豪さんのポッド」でも言及していただいたとおり、なかなか豪さんのイベントに行くことができないという時期もあったけど、もっと気軽に考えるべきだと思いました。「エロの諸葛亮孔明」(杉作J太郎)とか、日曜まっ昼間からそんな単語なかなか聞けないもの。

◆その後、新宿ニコンサロンにて開催している矢部朱希子の写真展「ここに生きる」へ。
矢部さんとは古い付き合いだけど、写真を見るのは7年ぶりぐらい。そうか、一度は写真をやめようとしたのか。
被写体こそ障害を持った方達だったけど、視線の交え方は昔から変わらない。まっすぐ正対。不器用なほど誠実。とてもよかった。

◆夜、NHKスペシャル「シリーズ原発危機 第1回 事故はなぜ深刻化したのか」。
いろいろ思うところはあるが、なによりまず、東電社員までもが「それをやったらこの会社、終わりだろう」と証言するほどの最終手段であるベント弁の開放について、電動操作しか想定されていなかったというのが痛すぎる。いかな電力会社といえど、電気に頼りすぎだよう。

2011/06/04

feat.岡本太郎

◆平賀さち枝さんのレコ発のときにALFRED BEACH SANDALこと北里彰久くんから頂いたファーストアルバム『One Day Calypso』のサンプルがむちゃくちゃよい!!

昨年出た自主流通盤はかなりヘヴィに聴きこんでるし、ライブだって何度も観てるけど、ちょっと突き抜けちゃってるよ、これは。
自主流通盤のほうは弾き語りメインで、それだけでも強烈にユニークな音楽だったのに、他の楽器の入ったパラダイス感がハンパない。それでいて歌詞の平熱っぷり。
「GPSで把握する徘徊老人の位置情報/NHKが制作したドキュメンタリーの再放送」
といった俳諧のごとき言葉の戯れも楽しすぎる。
常套句もすぎるけど、夏に向けてマストバイとはこのアルバムのためにあるような言葉でしょう。

以前、撮らせてもらったALFRED BEACH SANDALのライブ動画。これは弾き語りだけどね。アルバムではパーカッシブなアレンジですげいことになってるよ。



◆椹木野衣『反アート入門』、読了。



『反アート入門』の“反”アートたるゆえんは、

「作る」のでも「残す」のでもない芸術のあり方が、現状のアートや美術というのとは別に、たしかにあると予感してもらえれば、それだけで十分です。

という一文につきるのだけど、そこに至るまでの、「神の死」から始まる西洋近代美術の出生に始まり、情報をコントロールすることによって得られるヴァーチャルな価値のゲームとまでなったアートという概念の“入門”書としても、おもしろく読んだ。

しかし、その門はやはり、そこをくぐることによって上記の一文にたどり着くためにあつらえられたものであり、門の出口付近に至り、「残すこと」と「別の芸術のあり方」との間の矛盾を生きた芸術家としての岡本太郎が召喚される。キーワードは「呪術」である。

 岡本太郎が呪術と言う時、それは宗教の発生から近現代美術に至る、西洋を中心とする権威のシステムそのものへの挑戦を意味しています。だからこそ、かたちあるものを文書で正当化してせっせと保存することよりも、その場その時々に作品を通じて生み出される経験の一回性のほうを重視しているのです。
 そう言えば、このことに関しておもしろい話が残っています。生前に岡本太郎の個人美術館ができる話が持ち上がった時のこと、展示室をまかされた設計者は、あらかじめどんなふうにしたのか太郎に聞いてみたそうです。たしかに、生前に個人美術館の話などが持ち上がれば、重箱の隅をつつくまで口を挟むのがアーティストに特有のわがままのような気がします(実際そうです)。が、この点でも太郎はまったくちがっていました。つまり、展示やそのやり方は「おまえにまかせるよ」といったふうで、ぜんぜん関心を示さないというのです。だけれども、それだけならあの岡本太郎のこと、想像できないこともありません。わたしが驚いたのは、設計を担当された方が太郎に、でも、作品の保全だけはちゃんとしないといけないから、作品はきちんとケースに入れて守りましょうと、ガラスの壁面を備えた展示室の案を出した時、それまで展示などにはまったく関心がないようだった太郎の声色がいきなり鋭くなり、「なんでガラス越しなんだ、それだけはやめろ」と怒り出したというのです。実際、前に岡本太郎の作品が美術館で暴漢に襲われ、刃物で切られたことがありました。設計者は勿論そのことを知っていて、二度とそんなことがあってはいけないといいう念入りの配慮だったのですが、それに対する太郎の答えは、アーティストとしては想像絶するものでした。つまり、「切られてなにが悪い! 切られたらオレがつないでやる。それでいいだろう。こどもが彫刻に乗りたいといったら乗せてやれ。それでモゲたらまたオレがつけてやる。だから触らせてやれ」(平野暁臣『岡本太郎「太陽の塔」と最後の闘い』PHP新書)と、岡本太郎は言ったというのです。
 これは、美術作品を収蔵や展示など度外視して、どこまでも体験に即して見なければ出てこない発言です。
(略)
 けれども、ここには大きな矛盾があります。それはそんなことを言っても岡本太郎とて、やはり近代的な文脈に乗って登場した美術家であることに変わりがないからです。いくら彼が美術に対する呪術の力を申し立て、展示や収蔵といった制度に挑んだとしても、彼の作品は分類上では、まぎれもなく絵画や彫刻の範疇に括られるほかありません。事実、それらが飾られるのは呪術の場などではなく、制度としての美術館以外ではありません。先ほどの話だって、岡本太郎美術館をめぐってのエピソードにすぎないのである。むろん本人だって、いまさら原始の呪術的世界に戻れるとは思っていないのです。
(略)
 むしろ彼は生涯にわたり正真正銘、美術家であり続けましたが、しかし実質においては呪術的であろうとした。そして、そのようなありえない矛盾を根幹にものを作り=ものを消す(かたちを残さず経験と伝える)ような立場にあることを「芸術」と読んだのだと私は考えます。つまり太郎にとっては芸術こそが、美術と呪術を総合するものではなく、両者の矛盾を燃え立たせるような、(あえて言えば)現代における一瞬の儀礼の場であったにちがいありません。

これを読んで思い出すのは、やはりChim↑Pomの個展「REAL TIMES」に展示された「LEVEL7 feat.明日の神話」のことだ(ちなみに『反アート入門』のカバー写真には、彫刻家の西尾康之がChim↑Pomの展示「にんげんていいな」とコラボして制作した彫刻作品が使われている)。
Banksyなどグラフィティアートの例を持ち出すまでもなく、岡本太郎の意志においても、岡本太郎の壁画「明日の神話」に福島第一原発のイラストを付け加えるという行為は、とりたてて非難されるべきものではない。また、それが「展示」という形式に落とし込まれる矛盾も、Chim↑Pomがアートの文脈に生きる以上、引き受けざるをえないものだと思う。

ただ、かつて見た「広島の空をピカッとさせる」の抉られるような感銘に比べると、「LEVEL7 feat.明日の神話」には感ずるものが少なかったのも事実で。
「ピカッ」の、ぬけるような青空に描かれた弱々しい筆致から引き出される自己や歴史への多層的な省察に比べてしまうと、どうしても今回は「原発反対」という二元論的アピール以上のものが見えにくかった。
もちろん時間を置くことで、作品についてもう少し自分の中で発酵してくるものもあるかもしれないが。

これは同じく「LEVEL7 feat.明日の神話」を見た松江哲明監督と話したことでもあるが、あの映像ではむしろ「明日の神話」の壁画以上に、背景に映り込んでいる渋谷駅構内のほの暗さのほうが気になってしまう、いまは。

2011/06/03

平賀さち枝のトラッド

◆各記事の下にね、いろんなシェアサービスでこのブログの記事を共有(短縮URLを発行したり)できるボタンがついてますけど、なんかBloggerの長期メンテから復帰してこのかた、Googleアカウントで「いいね!」的なこと(?)をできるボタンが追加されましてん。そいつが赤とか青とかカラフルなのが、すごくいや。他のボタンとセットになってて、これだけを消せない仕様になってんの。どうせだったら、もっと意味のある仕様を追加せいや。
こういうの(↓)とか。



◆最近の原稿仕事をば。

・今週売り「SPA!」(2011年6月7日号)カルチャー欄の前田司郎特集、その名も「『前田司郎』という稀有(わかりにくい)な才能」に、前田さんをめぐる編集者の一人としてコメントを寄せております。昔のケータイから発掘した岸田賞授賞式でのピースサイン写メも載せてもらいましたので、よかったらご笑覧ください。

・発売中の「マンスリーよしもと」(2011年7月号)で、松本人志監督『さや侍』の主演俳優にして“ワンランク上のおっさん”こと野見隆明さんにインタビューしています。野見さんに中身のある話を聞くという、我ながらかなりのムチャ振られでしたが、がんばりました。
『さや侍』、この日見た映画がそうでした。掛け値なしによかった。

・発売中の「シアターガイド」(2011年7月号)では、青山円形劇場での最新公演『CLOUD-クラウド-』を控えた作・演出のスズカツさんと主演の田口トモロヲさんの対談を担当しています。
「シアターガイド」、次号でリニューアルするそうで、小さい判型の頃から親しんできた読者としても楽しみです(判型は変わらないそうですが)。

・発売中の平賀さち枝ファーストアルバム『さっちゃん』のチラシに、コメントを書かせてもらいました。



以下、そのまま転載します。
夜通しじんまりとして迎えた、美しい朝焼けのような歌。きっと誰にも見覚えがあるだろう。でもいま、あの曙光がどんなにかけがえのないものだったかぼくは知っている。光を滲ませながら平賀さち枝が歌っている――。

◆木曜、その平賀さち枝さんのリリースパーティ@渋谷7th FLOORへ。
とてもよかった。自信に磨かれて艶が出てきたな。
そういや地震後、平賀さんのライブを見るの初めてだと気づいたのは、やはり3・11以降でいくつかの曲の響き方が変わっていたから。本編ラストの「眠ったり起きたり」には不覚にもうるっときてしまった。

平賀さんってその現代性の奥にかつてのURC系フォークやニューミュージックの影響なんかを語られがちだけど、ぼくが強く感じるのはむしろMary McCaslinあたりに代表されるトラッド系女性SSWの影だ。美しいビブラートが空のグラデーションを震わせている。



2011/06/01

ケイオス・スワン

◆「ケイオスリングス オメガ」やばい。ちょっと人と会う仕事がないもんだからと油断したら、2日間どっぷり。EXTRA編2周してようやく解放されました。
ゲームはね、ホントまずいから。もう人間じゃなくなるから。ガキの頃は普通に学校ズル休みしてたもんね。
最近はドラクエシリーズ最新作だけって縛りにしてるんだけど、ついつい手を出してしまったiPhoneアプリ。スマートフォンゲームに懸けるスクエニの本気こと「ケイオスリング」ですよ。
なにが驚いたって、シナリオ担当が、あのドッグレッグス代表にして『無敵のハンディキャップ』著者の北島行徳さんじゃないですか(オメガは別の方)。
それを踏まえてプレイすると、「アルカ・アリーナ」の設定がまた味わい深すぎる……。

あの北嶋さんだってことを気づかせてくれた(インタビュアーが「北島さんがゲームの脚本を手がけられるようになる前からのファンなので」なんてことを言ってる)スクエニ・安藤プロデューサーのインタビュー記事
RPGの便利機能(戦闘時のアニメーションOFF等)を「おもてなし」って表現しているのが面白い。ゲーム業界では常識なんだろうか。「機種に沿ったもてなしができそうな予感」かー。

◆新宿ピカデリーでダーレン・アロノフスキー監督『ブラック・スワン』。



そもそもバレリーナの足の裏は血マメだらけっていう西洋近代芸術の光と影を持ち出すまでもなく、重力を超越した優雅な羽ばたきの裏には、そりゃなんかあるよね。人間だもの。

この映画が『レスラー』の姉妹篇として構想されたというのもよくわかる。虚実皮膜の向こう側という意味では、『レスラー』よりもさらに純度が高い。
ていうかザ・グレート・ムタ? みたいな。試合中にいなくなった武藤が、突如NWOムタになって戻ってきた東京体育館を思い出しちゃったよ。

◆前の日記で書いた撮影について、松江哲明監督が「HogaHolic」に書いている。
「この日は23時頃から雨が降り始め、朝日は昇らなかった。しかし、撮影を終えた時、僕はこの雨を、薄暗い雲を眺め、怯え、生きていくんだろうな、と思った」

そう現場記録を担当させてもらいました。こっちはこっちで言語化していかないとな。
完成まで、それほど時間はかからなそうとのこと。本当に楽しみだ。

2011/05/29

アフターわっしょい

◆デザイン変更。ジオシティーズ時代の日記にちょっと似せてみた。まあ自己満足ですね。

◆先週は打ち合わせばかりしてたような。
気がついたら単行本の企画が6本も進んでるよ。あと新媒体の立ち上げが2件。原稿仕事もちょこちょこ(じつはけっこう長い原稿も書いてる)って感じか。
まあ、これくらいじゃないと先行き不安なのもたしかだ。

◆水曜日、西川口のアイスリボン道場マッチへ。
アイスリボンはこれまで道場マッチを3回、後楽園大会を1回ほど観戦している。行くたびにプロレス初観戦者を連れていくと、みな一様にはまる。この日もしかり。
観戦後、西川口駅前の「やきとり次郎」で一杯ひっかけるのも乙。カウンターの女の子がかわいいの。その子がなんでここで働いているのか想像するだけでもビールがすすむ。
平日ちょっと遠出して、女子プロレスを見て、やきとりで一杯。なかなかぜいたくなレクリエーションですよ。
次はみなさんもぜひ!(って誰に言ってるかわからないけど、これ書いてるBGMが加藤和彦なのでそーゆう気分)

◆金曜の夜は松江哲明監督最新作の撮影に参加。
撮影・近藤龍人、録音・山本タカアキ、そして主演・前野健太。
こう書くと自然と『ライブテープ』が思い出されるが、あの撮影よりもさらに過酷な状況のなか、未知なる手応えと薄明かりの空を垣間見た。
松江監督の最高傑作という言葉に収まらぬ、いま東京で撮られるべき現実の詰まった凄まじい映画になると思う。
いまはただ早く完成することを願うばかり。

◆撮影の興奮もさめやらぬまま、土曜は五反田へ。アトリエヘリコプターにてわっしょいハウス『おばけが出現』を観劇。
いやー面白かった! 前田司郎イチ推しも納得の初期五反田団テイスト(「おやすまなさい」とかね)にぐっとくるものが。
トーク(「アフターわっしょいハウス」)の司会もさせていただき、これまた楽しかった。
作・演出を手がける犬飼勝哉氏のバイト先の先輩こと、怪談作家・吉田悠軌氏の「お風呂は大事」という視点もすばらしい。

終演後、吉田悠軌氏と「吉田ゆうきサミット」仲間であり、やはり観劇にきていた二胡奏者の吉田悠樹氏と新宿で二軒。

2011/05/24

空に溶けていった音楽

◆先週は久々の原稿ラッシュ(忘れていたなこの感覚)に風邪っぴきのダブルパンチでひいひいゆってました。
なんとかしのげてよかったよ。

◆前野健太レコ発大ワンマン@渋谷WWW、一曲目の「背中」からぞくぞくくるものがあった。
ああこれが前野健太だった、と懐かしさすら。
とはいえ3・11のこちら側、響き方の変わった曲もいくつか。
新曲よりもそちらのほうが気になる。「だれかの」もいつか聴いてみたい。
DAVID BOWIEたちに入った三輪二郎は、キース・リチャーズみたいな存在感でしたな。

◆磯部涼のビジスタニュース原稿「音楽の(無)力」がよかった。
いくつか聞き覚えのある音が鳴ってるよ。
せっかくなんで昔、自分が書いた原稿をアップしておきます(こんな機会でもないとサルベージしづらいもんで)。

特集 2009年、私の聴いた音楽
「空に溶けていった音楽の行方」
九龍ジョー

ワンシーンワンカット74分、吉祥寺の街をフォークシンガー・前野健太が弾き語りながら練り歩くドキュメンタリー映画『ライブテープ』(監督:松江哲明)の撮影に立ち会ったのが09年元旦のこと。撮影時点ではただの自主映画にすぎなかった本作は、10月に東京国際映画祭の「ある視点」部門賞を受賞し、あれよあれよという間に、年末より全国公開に。まずはそんな09年だった。
とにかく多くの人の目に触れてほしい映画だ。スクリーンに映る通行人の姿がとてもいい。前野健太という未知のミュージシャンに遭遇し、無関心のまま足早に通り過ぎる家族連れ、歌詞のフレーズに一瞬だけ歩みを止める紳士、手を繋ぎながら耳を傾ける恋人たち――。彼らの足どりや息づかいにかぎりなく接近するリズムで刻まれた前野の歌は、ラストシーンに至り、吉祥寺の空へと溶けていく。
なぜいまフォークなのか? という向きもあるだろうが、この映画に活写されている「弾き語り」というフォームを借りつつ毎日の過激さを歌う前野の姿には、音楽を〈鳴らすこと/聴くこと〉の関係をめぐる新たなる思索や変革のポテンシャルが秘められていると思うのだ。なにはともあれ、映画を観てみてほしい。

その『ライブテープ』で素晴らしいサックスの音を聴かせる音楽家・あだち麗三郎の動きからも目が離せなかった。
「俺はこんなもんじゃない」など関わりのある全バンドを脱退しての「うたうたい」宣言。四谷にある公共施設の音楽室を借り切って定期的に行われたライブは、窓から見える新宿御苑の緑や遠くビル街を背景に、(まるで書き割りのような)夕暮れや夜空のライティングの下、マジカルな音響空間を現出させていた。他にも、公園や民家、プラネタリウムといった非ライブハウスな場所を会場に選び、その〈場〉と聴衆の持つ潜勢力を最大限にまで引き出そうとするあだちのライブは、彼の中にある〈鳴らすこと/聴くこと〉への求知心を感じさせるものだった。難解さはなく、そこにあるのがあくまでポピュラリティのある音楽だというのも新鮮だった。

極めつけは、あだちや、やはり『ライブテープ』の出演者でもある二胡奏者・吉田悠樹らも参加し、夏の2日間に渡って開催された「フジサンロクフェス'09」だろう。
写真家・鈴木竜一郎が発起人となり、御殿場にある鈴木の実家のガレージを会場に行われたこのユニークな家系フェスには、11組+αのミュージシャンが出演、約50人ほどの観客が集まった。便宜的に「11組+α」としたが、参加ミュージシャンたちの多くはマルチプレイヤーであり、その場の流れでフロントを務めたり、あるいは誰かのバックに回ったりと、有機的に楽隊を編成していたのが印象的だった。
また、便宜上、ミュージシャンと観客に分けてはみたが、実際のところそこでは、音楽を演奏すること、聴くこと、音楽について話すこと、踊ること、飲み語らうこと、おしゃべりすること、それらが渾然一体となっていた。鈴木はホームページにフェスのコンセプトとして「クロープン(clopen)」という言葉を挙げていたが、「閉じ開いている」とはまさに言いえて妙。
フェスが佳境にさしかかった頃、鈴木家のベランダで吉田の奏でる二胡の幽玄な響きが夕空に溶けていくのを聴きながら、右手に見上げた富士の稜線はなんとも美しかった。

ここにある可能性をなんと名指すべきか、ずっと考えている。
「アンビエントとしてのフリーフォーク」「声の社会的編成」……。しかし、彼らの音楽は、そういった名指しをすり抜け、ますます融解し、遍在化していくことだろう。来たる2010年もその行方を見守っていきたい。
(初出:『remix』2009年12月号)

2011/05/14

喪の儀式

◆Bloggerが長いことメンテ中で更新できずにいた。
プレイステーションネットワーク個人情報流出事件の影響で、いろいろセキュリティの見直しを図ってるのかな。

◆週の後半、某映画スターにインタビューしたほかは、ある長めの原稿にかかりっきり。
いまもなお。

◆金曜の昼、仕事の合間をぬってソニーPCLにて平野勝之監督『監督失格』の試写を拝見。

平野さんの喪の儀式がそのままそこにあった。
由美香さんがもらした「幸せ」という言葉が、黄色い自転車に乗って走り去っていった。

庵野秀明プロデュース。
いま庵野さんがこの映画をサポートしなければならない意味も、覚悟も、痛いほどに伝わってきた。

公開は9月3日。
すでに特報映像がYouTubeにあがっている。

2011/05/10

骨折りブラック師匠

◆ここに書くのをすっかり忘れていたのですが、快楽亭ブラック師匠がまたも左足を骨折しまして、全治一ヵ月の松葉杖生活とのこと。
とはいえ今日から名古屋の大須演芸場にもきっちり出演されているそうで、大事に至らなくてよかったです。

詳細については「快楽亭ブラックの出直しブログ」のニュース欄に書いておきました。
あんまりにもコンスタントに厄災がつづくもんだから、おもわず「快楽亭ブラック 大病厄災史(2005.10-2011.05)」も表にまとめてしまいました。ぜひご覧いただければ幸いです。
師匠、お大事に~。

◆日中、原稿仕事をこなし、夕方から新宿で打ち合わせ。

◆取材準備のため、某監督の新作を一足先に拝見させていただく。
前二作もけっこう好きだったが、また違う方向に進んでてよかった。
『道』ですな。
今回は幅広く支持を得るんじゃないだろうか。
北野武監督のフィルモグラフィに重ね合わせると、まさに『あの夏、いちばん静かな海』。
じゃ、つぎ『ソナチネ』じゃんか!

2011/05/09

物騒すぎる「(笑)」

◆昼、淡路町で新しいメディアの打ち合わせ。
3・11を挟みつつ、回数を重ねたことでようやくカタチを結んできた。
あともう一歩。

青山に移動し、対談インタビュー取材。
この媒体も次号でリニューアルとのこと。
新しく始まったり、変わったり、3・11以降のモードが徐々に見えてきた……かな。

渋谷タワレコを軽く流し、帰宅。
近所のファミレスで読書。

◆フィリップ・K・ディック『流れよわが涙、と警官は言った


ぎゅっと握っていた手がカラだったような。
その寄る辺なさが沁みる。

◆西岡研介『襲撃 中田カウスの1000日戦争


やはり同じ筆者が構成している『憚りながら』と同じく、物騒な場面に滑り込まされた「(笑)」が効果的すぎる!
例えば、カウス師匠が愛車ベンツを黒いフルフェイスのヘルメットに黒のダウンジャケットの男に襲撃された場面――。
 カウスが掴んだ凶器の先端には、異様なものが付いていた。緊急時に車の窓などを割る「ガラスクラッシャー」と呼ばれる器具が、ガムテープでぐるぐる巻きにされていた。カウスが続ける。
「こんなもんで殴られたらたまったもんやないと、必死でバットを車の中に引き込みました。けど、その時はもう頭ん中は落ち着いてました。バット引っ張りながら、ああ、これはプロの“頼まれ仕事”やな……とね。
 そんなことを考えながら引っ張りっこしているうちに後ろから突然、もう一本の手がニューッと伸びてきたんです。僕、なんぼ『怪芸人』や言われても、さすがに手は三本もありませんからね。ギョッとして振り返ったら、後ろの弟子も一緒になってバットを引っ張ってたんですわ(笑)」
しかし、この本に登場するカウス師匠の語り口や胆力にはすっかり魅了されてしまったよ。
そして、筆致の隅々からは「吉本」的なるものへの愛情すら。もちろん未来に対しての問いも投げつつの。
 怪芸人というが、芸人というものは、カウスに限らず、そもそも“怪しい”ものではないのか。さらに言えば、一般社会で生きる人びと、つまりは堅気の世界の人間が、決して持ち得ない怪しさや艶気、さらには狂気を孕んでいるからこそ、芸人は客を惹きつけるのであり、逆に怪しくなければ、芸人といえないのではないか……と。
[略]
 少しでも芸能界や、暴力団の取材をした経験のある記者なら、いや別に記者に限った話ではない。日本における「興行」というものの歴史を繙けば、昔から、そして今なお、興行の世界が、ヤクザと切っても切れない関係にあることが、誰にでも分かるはずだ。
 しかも吉本興業といえば、日本最古にして、最大の芸能プロダクションである。さらに言えば、本書でも詳述した通り、同社は吉本せいの時代から山口組との関係が深く、弟の正之助に至っては、その山口組を、「日本最大・最強の暴力団」に育て上げた田岡一雄・三代目組長との関係を半ば公言し、果ては山口組の威を借りて恐喝に及び、司直に逮捕されている。
 このような歴史も踏まえずに、今日のお家騒動をいくら報じてみても、浅薄なものにならざるを得ない。私は一連の“吉本バッシング報道”に覚えた苛立ちは、この浅薄さ、に対するものだった。
 ならば、今回のお家騒動を、吉本の90年余に及ぶ歴史の中で、捉え直してみよう――というのが、本書を上梓した趣旨だ。

2011/05/08

おすそわけカルチャー

◆取材準備で資料を読んだりDVDを観たり。
夜、開局したDOMMUNE FUKUSHIMAで「プロジェクトFUKUSHIMA!」特別番組を。

◆宇川直宏 said 「3・11以後のぼくのアクションは、アメリカ西海岸から学んだ『おすそわけカルチャー』」

多様な可能性を孕んだロゴデザインがすばらしすぎる。
大友良英さんの「残りの人生を懸けたプロジェクトになるかもしれない」という発言も強く印象に残った。

◆ETV特集で神聖かまってちゃん。
松江哲明監督も入江悠監督もやらなかった、の子への接近戦。
元ひきこもりミュージシャンの、現実社会との軋轢、葛藤、そして成長、というよくもわるくもNHK的な切り口だったが、の子のナマの言葉・表情が捉えられていたり、微妙に構成が破綻していたりとなかなか面白かった。

マネージャー劔氏が『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』の劇中とほとんど同じようなセリフを言っていたのには笑ったなあ。
どちらもとてもいいシーン。

2011/05/07

Prisoner of Rock'n Roll

◆親族の祝いごとでホテルランチ。

◆昼すぎ渋谷に移動し、「原発やめろデモ!」に参加。

PARCO前でのRUMIのフリースタイルが、じつに説得的でよかった。
信号待ちの女の子がとなりの子に「あれかっこいいね」とささやいていた。




◆デモで通り過ぎた公園通りすぐ脇のWWWにて、ceroのライブ。
客席で「No Nukes」のプラカード掲げてるヤツがいる。
メンバーもライブ前にデモ流してきたっていうし、その感じがすごくしっくりきた。

トリの奇妙礼太郎トラベルスイング楽団、はじめてライブを観たけどすごいね。
ゴキゲンなブラスロックに乗せ、シャンソン(つーか越路吹雪)や歌謡曲(ユーミンや松田聖子)などをなんの衒いもなく歌い上げる。スプリングスティーンのロックンロールメドレーのような高揚感があったよ。
いやそれはちょい言いすぎかも。

Prisoner of Rock'n Roll



2011/05/06

バカヤロー!

◆昨夜のDOMMUNE「全ポ連のキッズ展」にご来場の方々、見てくださった方々、宇川さんはじめスタッフの方々、出演者の皆々様、ありがとうございました!
キッズには蹂躙されまくりでしたが……たのしかった!
やつらのパワーをなめてました。
こんなご時世ですが、未来は思いのほか明るいやもしれません。

◆午後イチ、恵比寿のS誌編集部で打ち合わせ。

◆天気がいいのでIくんを呼び出し、広尾まで散歩。でもっていい感じの純喫茶でシナモントーストとコーヒー。
水曜に観た「スカートの裾まつり」(おもしろかった!)の劇中でそのすばらしさをやたら熱くシーンがあって、すぐにでも食べたかったシナモントースト。よく考えたら火曜にも南阿佐ヶ谷の喫茶店で食べていたよシナモントースト。
ままごと「わが星」やデモの話などで小一時間。

デモのこと話しながら脳裏に浮かんでいたのは、学生の頃に叩き込まれた「青い芝の会」の行動綱領、とりわけ「健全者文明」って言葉で。
節目節目でわりといつも何度でもここに戻ってきてしまうの、なあ。

日本脳性マヒ者協会 全国青い芝の会 行動網領

一、われらは自らがCP者であることを自覚する。
われらは、現代社会にあって「本来あってはならない存在」とされつつある自らの位置を認識し、そこに一切の運動の原点をおかなければならないと信じ、且つ行動する。

一、われらは強烈な自己主張を行なう。
われらがCP者であることを自覚したとき、そこに起るのは自らを守ろうとする意志である。われらは強烈な自己主張こそそれを成しうる唯一の路であると信じ、且つ行動する。

一、われらは愛と正義を否定する。
われらは愛と正義のもつエゴイズムを鋭く告発し、それを否定することによって生じる人間凝視に伴う相互理解こそ真の福祉であると信じ、且つ行動する。

一、われらは健全者文明を否定する。
われらは健全者文明が創り出してきた現代文明がわれら脳性マヒ者をはじき出すことによってのみ成り立ってきたことを認識し、運動及び日常生活の中からわれら独自の文化を創り出すことが現代文明を告発することに通じることを信じ、且つ行動する。

一、われらは問題解決の路を選ばない。
われらは安易に問題の解決を図ろうとすることがいかに危険な妥協への出発であるか、身をもって知ってきた。われらは、次々と問題提起を行なうことのみわれらの行いうる運動であると信じ、且つ行動する。

自分にとってもできるだけウソくさくないやつ、やり方を考えていかねば。
というか、そうでなさげな人を見ると「あんたウソっぽいよ!」っていちいち突っ込んでしまう心の狭さがどうにも。

◆恵比寿アトレの有隣堂でフィリップ・K・ディック『流れよわが涙、と警官は言った』(ハヤカワ文庫)、片山杜秀責任編集『RATIO 思想としての音楽』(講談社)など購入。

新宿駅南口の駐輪場、さいきん警備員が「いってらっしゃい」「おつかれさまです」と挨拶してくれるようになって、どうもこそばゆい。あの新しく入ったおばさんが運動を起こしているのだとにらんでいる。いや、とてもいいことだと思います。

家からいちばん近い新宿区立の図書館、角筈図書館に初めて行ってみたら、震災の影響により建物(区民センター)ごと改修工事するとのことで、返却しかできない縮小開館状態だった。残念。
こんどは北新宿図書館に行ってみよう。

◆豊田道倫さんに薦められた島崎智子『バカヤロー!』が最高すぎる。
東京でレコ発やらないのかな。20日の7th floorは前野健太のレコ発WWWとかぶってるんだよなー(マエケンの日記でもバカヤロー!)。
前日の19日におんがくのじかんとかで誰か企画してくれないだろうか……(他力本願)。

2011/05/05

「アーバンソング」#02のお知らせ

◆本日(5月5日)19時よりDOMMUNEにて「全ポ連のキッズ展」(出演:小田島等、大橋裕之、箕浦建太郎ほか)生放送です。ぼくも司会でお手伝いさせていただきます。
「今年のこどもの日ほど、こどもにとって『なんだバカヤロ~!!』な日もないだRAW((T_T))」
という小田島画伯のつぶやきがすべてを物語っていると思います。
キッズも元キッズもぜひご覧いただければ幸いです。
時間あったらぜひ会場にも遊びにきてください~。

◆告知つづきで恐縮ですが、「アーバンソング」#02の詳細が決まりましたので、発表させてください。

「アーバンソング」#02
2011年6月19日(日)
open 17:00/start 18:00
@スナックアーバン
http://snack-urban.com/
(丸ノ内線「四谷三丁目」4番出口より徒歩2分)

<出演>
高城晶平(cero)&MC.sirafu
おまつとまさる氏(松倉如子&渡辺勝)

<料金>
¥3000(2ドリンク込)

<予約>
「名前/枚数/電話番号」を以下までお願いします。
urbanuta@gmail.com

いまや東京インディシーンの台風の目となっているceroのフロントマン高城晶平くんと、そのceroでもサポートミュージシャンとして活躍している音楽怪人・MCシラフ氏(片想い、うつくしきひかり等)によるユニット。
それから先日、吉祥寺の喫茶ダーチャの閉店ライブ(なおさんおつかれさまでした!)で久しぶりに観たら、その世界観の研ぎすまされっぷりに圧倒されてしまったおまつとまさる氏。
この二組によるアーバンな夜をお届けします。

個人的には、はちみつぱいやアーリータイムス・ストリングス・バンドなどで活躍してきた渡辺勝さんとcero高城くんの対バン、というところにぐっとくるものがあります。
あとなんつっても松倉さんの本気!

例のごとく狭い会場なので、早めのご予約をお願いできれば幸いです。
よろしくお願いします!

松倉如子 「ともだち」


高城晶平(cero) 「明日の天使」


片想い 「踊る理由」


cero「武蔵野クルーズエキゾチカ」

2011/05/04

Shot through the Heart

こちらよりブログを引っ越し、というか全面移植してやってまいりました。
まずはあいさつがわりに、大好きな永野の「騒音おばさん」ネタを貼っておきます。



また、遅ればせながら「アーバンソング」#01にお越しの皆様ありがとうございました!
スナックで弾き語り、というお題にいろいろと腐心しましたが、豊田道倫さんとまめッこの熱演、それからお客様のつくってくださった空気で、一つの答えというか方向性を見いだせた気がします。

次回もすでに詳細決まっております。
近日中に告知をするようにしますので、なにとぞよろしくお願いします。

2011/03/28

「アーバンソング」やります

◆四谷荒木町にある「スナックアーバン」というスナックで、4月から隔月ぐらいのペースで弾き語りのライブイベントを開催させていただくことになりました。

普段は完全会員制のお店ですが、このライブはもちろんどなたでも大歓迎です。ただ、店内は20数名も入ればいっぱいになってしまうため、早めのご予約をお願いできれば幸いです。
なにとぞよろしくお願いします。
「アーバンソング」#01
2011年4月24日(日)
open 17:00/start 18:00
@スナックアーバン
http://snack-urban.com/
(丸ノ内線「四谷三丁目」4番出口より徒歩2分)

<出演>
豊田道倫
藤井洋平(a.k.a. まめッこ)

<料金>
¥3000(2D込)

<予約>
「名前/枚数/電話番号」を以下までお願いします。
urbanuta@gmail.com

◆今回のライブ企画をスナックアーバンのママから振っていただいたとき、なにはともあれまずは豊田さんにお声がけしないことには始まらないだろうと思いました。快諾していただきうれしい。

じつは地震の日、一時間ぐらい前まで新宿駅東口ベルクで豊田さんとまさにこのライブの打ち合わせがてらコーヒーを飲んでいました。先日お亡くなりになった加地等さんの話などもしました。
あの日の記録を豊田さんもブログに残しています。

◆もうひとりのまめッこは、今年1月に発売された1stアルバム『この惑星の幾星霜の喧騒も、も少したったら終わるそう』で聴けるベッドルーム・ファンクが素晴らしく、そのレコ発として今月20日に阿佐ヶ谷ROJIで行われたワンマンショウでの熱量にも圧倒されたばかり。
スナックのアーバンな雰囲気の中で聴いたら最高だろうな、と勝手に確信しています。

では最後に今年1月に撮影させてもらった藤井洋平(a.k.a. まめッこ)のライブ動画をば――。

藤井洋平(a.k.a. まめッこ)「ママのおっぱいちゅーちゅーすって パパのスネをかじっていたい!」


藤井洋平(a.k.a. まめッこ)「あなた、バカみたい!」

2011/03/26

Here and Elsewhere

◆地震の瞬間は新宿の高層ビルの30階にいた。免震構造とおぼしきそのビルは必要以上に揺れた。尻餅をついた黒人が大声を上げる。ぼくは体育座りの体勢でデイパックを頭にかざし、じっとしていた。

けっきょくそのビルに1時間ぐらい留まる羽目になった。エレベーターが止まり、階段も封鎖され、なによりビルの中がいちばん安全だというので。
揺れがおさまってもなお黒人は尻餅をついたままだった。Twitterと繋がることが妙な楽観をもたらす。遠くのビルからあがる黒煙を、窓越しに見た。

本当は夕方から原宿で家族全員集まって食事をする予定だった。そんなの3年に一度あるかないかのことだ。
けっきょく父親だけが原宿にたどり着き、祖母と母と妹は電車の中で足止めを食らってそのままUターンしたという。ひとり暮らしの祖母が母と一緒にいたことは不幸中の幸いというべきか。

青梅街道を歩いて帰宅。棚から飛び出した食器が割れて、リビングに散乱している。書斎のことは一目見ただけで、もう考えないようにした。
テレビでは帰宅難民のニュース。震源地の模様はなかなか伝わってこない。

深夜、テレビで気仙沼港が火に包まれている映像が流れる。未曾有の事態が起きていることを実感する。

◆12日土曜日。朝から痛ましいニュースが続々と流れてくるが、何もできない。福島の原発の様子も気がかりだ。
ただただネットやテレビに張り付き、情報を摂取しつづける。軽い離人症のようなものに掛かっていたかもしれない。
反動で、こんどは情緒がおかしくなってくる。やたら涙もろい。自己防衛のため、布団に入り、ちいさな音で志ん生の落語や70年代のSSW物なんかを聴く。

◆13日の昼、坂口恭平が吉祥寺に新居を完成させたというので手土産を持って訪ねる。
吉祥寺の月極駐車場に車両として建てられたそのモバイルハウスは、ホームセンターで買える資材を使い、総工費2万6千円也。駐車料金と合わせても、わずか5万円弱で持てるマイホームだ。
しかもソーラーパネルと自動車の廃棄バッテリーを使った太陽光自家発電システムにより、電力は完全自給自足だという。持っていたiPhoneを繋いだら、普通に充電できてしまった。現状、被災地では避難と救助が最優先だが、いずれ仮設住宅のことを考える際には役に立つアイデアかもしれない。

坂口恭平の近著『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』は、ぼくが今年の1月まで在籍した太田出版で編集した最後の活字本となった。
本書ではいかに我々の生活においてインフラがブラックボックス化しているかについて、繰り返し注意を喚起する。その延長として、電力エネルギーについての関心が浮かんでくるのは自然なことだった。
坂口恭平、磯部涼らとともにDOMMUNEでやっているレギュラー番組「都市型狩猟採集生活」で、環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長と映画『ミツバチの羽音と地球の回転』が公開中の鎌仲ひとみ監督を迎え、原発問題と自然エネルギーの可能性について考える放送をしたのは3月3日のことだ。あれからまだ2週間と経っていない。
放送は視聴者の反響も大きく、とりわけ番組中に聞けた飯田さんの言葉は、たんなる反原発でも、原発推進でもなく、原子力から自然エネルギーへのシフトに広く社会的なメリットを求めるという観点に立つことで、「脱原発」を目指す道程をリアルに捉えており、かなりのインパクトがあった。

震災は起きたが、新たな現実を見据えながら、これまで思考してきたことをより徹底してやればよい。
そう思えばいくらか気も晴れ、腹も据わってくる。

◆しかしそんな気分も、わずか2、3日で雲行きが怪しくなった。
福島第1原子力発電所でメルトダウンが起こる可能性がゼロではないという。たとえ最悪の事態が起こらなくとも、放射線による汚染は関東一帯にまで及びかねない。
飛来する放射性物質自体もそうだが、専門家の意見もまちまちという、“目に見えない”不安がこちらのメンタルを着実に削ってくる。

西日本に避難する友人・知人の声もちらほら聞こえてきた。ぼくも母方が大阪なので、関西に親戚は多い。一瞬、夜行バスで大阪にでも、なんてことも考えるが、やめる。仮に最悪の事態が回避されても、この状況は当分続くだろう。ことによっては数ヵ月、半年、1年。完全に移住するならともかく、一時的な避難は気休めにしかならない可能性が大きい。そう判断した。
もちろん生活圏を奪われてなお放射能の恐怖にさらされている被災者の方々や、妊娠中の方、小さいお子さんなどはできるかぎり安心できる場所にすみやかに避難してほしいと願う。

だれも被曝などしてほしくない。けれども事態の打開(指揮系統の判断ミスを含む)のために被曝してしまう作業員の方々がいる。東京でもヨウ素やセシウムが検出される。
頭ではわかっていても、すべて現実だと言い聞かせないと、いまだ信じがたい瞬間がある。

◆ずっと足下が揺れているような、いや実際、余震もなお続いている。
17日、秋葉原グッドマンにてお世話になっている吉祥寺バサラブックスの5周年記念イベント
ダイヤ乱れの日比谷線で駆け込むと、ステージにはわれらが赤い疑惑が。新曲のグルーヴがすばらしく、身体をあずけて揺らそうとするのだけど、アレ? ……かてえ。 と思ったら、そうか地震以来のライブハウスじゃないか。
けれども徐々に徐々に、疑惑であったまってくる。知った顔もフロアにいっぱいいて、それだけでもほぐれてくる。オダジーのDJは変テコでウケるし、ハラくんの弾き語りはお喋りみたいだし、ゲラーズの激しさはなんだか沁みるよ。
「笑えない日々を笑いとばすのさ/くだらないことにすべてを懸けるのさ」
ゲラーズ川副くん畢生の名曲「M」が、こんなふうに響くとは思わなかった。

思い起こせば3年ぶりのグッドマンだった。
あの夜とおなじように、大橋くんと奥田さんと総武線に乗って帰ってきた。

◆ニューヨーク・タイムズ紙に載ったという水木しげる先生のイラストがすごい。
「東京に日本のお化けが住めないところに、日本の悲劇がある」
そう言ったのは喜納昌吉だったか。
今回ですこし変わるかもしれないな。街の暗さだって、案外わるくない。

◆被災に遭われた方々には本当に心よりお悔やみを申し上げたい。
阪神・淡路大震災のときにも顕著だったが、この国は個人補償に対して(忌避とすら言っていいほど)えらく消極的なので、長期的に見たときに国内難民のような事態に陥ることも予想される。
これから始まるであろう物心両面のケアをサポートしていく必要がある。できることを探っていきたい。

◆半径5mぐらいの「自分」がどうやったら「社会」とつながる回路、それもできるだけウソくさくないやつを手に入れられるのか。もうそんなことを10年ぐらい言っている。
そうやって見てきた、聞いてきた、読んできたものが、たくさんある。
そう考えながら、原稿を書いたり、本をつくったり、べちゃくちゃおしゃべりもしてきた。
あいかわらずだが、ちょっとずつ更新していくしかない。