2006/02/01

『愛でもない青春でもない旅立たない』 前田司郎

aidemonai

五反田団主宰・前田司郎の処女小説。昨年の野間文芸新人賞ノミネート。

笙野頼子に「うんこ!」としか形容しようのない『アケボノノ帯』ていう傑作短編があるが、さしずめこちらは「ちんちん」か。あちらには女の子がうんこもらしたまま同級生の夏休みの課題作品を眺めるくだりが、こちらには別れた彼女のTバックはいたまま彼女のアート作品を眺めるくだりがある。もう戻れない。かなり間抜けなんだけどもどちらもその戻れなさ具合があまりに決定的で泣き笑いしてしまう。

五反田団の作品では直接的に描かれない「セックスのこと」がここでは前景化している。なにかとすぐ「エロい」とか言ってしまう中学生のようなメンタリティも残しつつ、大学生にもなって女の子とつきあったり仲よくなったりすると「セックスのこと」が入ってきちゃうようになったときのなんだかなあって感じがかなり生々しくって、いろいろ思い出してしまった。『愛と青春の旅立ち』ぐらい恥ずかしくなった。でも、愛でもない青春でもない旅立たない――じつに秀逸なタイトルだと思った。