2004/06/12

ANDREE MARLRAU LIVE / 萩原健一

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何度見返したことだろう。これが見たいがためにDVDプレイヤーを買ってしまったショーケン、85年のライブ「アンドレ・マルロー・ライブ」。CD版は二枚組でイントロからアンコールの「さよなら」まで14曲収録であることを考慮すると、8曲収録60分弱のボリュームは物足りなくも思えるが、全くもって心配無用。見終えたときには腹一杯になっていること間違いなしだ。
大麻・交通事故・離婚と様々なトラブルに見舞われながら、ショーケンがロックン・ローラーとしてエンターテイナーとしてのピークをいままさに極めようとする瞬間が刻まれている。そのステージから放たれる妖しすぎるほどの魅力、いやがうえにも引き込まれてしまう。

観客の熱気も凄まじい。なにせ近年のスタジアムライブからは考えられないほどステージが近い。手がいまにも足に届きそうで、おまけに客が投げたモノがショーケンにぶつかっちゃってるし、ショーケンも水ぶっかけてるし。「ハロー・マイ・ジェラシー」での大合唱にはショーケンも思わずニヤリ。その前後のライブ・ラストのジャケット風アングルも含めてなんとも感動的なシーンだ。

80年代中盤のロックといえばスプリングスティーン・シンドローム真っ只中、日本でも佐野元春を筆頭に、浜田省吾、尾崎豊、甲斐よしひろ、辻仁成..などなど、みんな歌詞の最後に「今夜、ここで」などと入れてた時期。なのでここでは鈴木明男のホーンやポーラ・デスモンドのコーラスが入ったアンドレ・マルロー・バンドの原型をあのEストリート・バンドに求めることもできるだろう。実際、ステージ上で楽器を弾きながら追いかけっこしてみたりする楽しさはEストリート・バンドを彷彿とさせるものだ。しかしあまたのスプリングティーンもどきのロック・シンガーのライブとはやはり違うのである。そこにはショーケンの特異な存在感がある。ときにはミック・ジャガーが入ったりするショーケンだが、この人には日本人離れした生粋のロックン・ローラー気質とでも呼ぶべきものが備わっているようにみえる。スタイルの模倣に終わらないオリジナルの。

楽曲も粒ぞろい。速水清司や井上尭之によってショーケンのために作られたこれらの曲はどれも日本のロック・クラシックスと呼んで差し支えない、と思うのだが、たとえばカラオケ(カラオケのどこがロックだ、とかゆう批判はこの際ナシ)に行っても、このショーケン黄金期ともいえる時代の曲が、代表曲であるにも関わらず、「54日間、待ちぼうけ」ただ一曲しか入ってないという現実はどうしたことか。過小評価もいいところ。どうにかならないものだろうか。

監督は高橋伴明。スタジアムライブ映像のお手本ともいえるオーソドックスなカット割りをベースに、「54日間、待ちぼうけ」ではドン寄りであおったままワンショットで流してみたり、曲間をストップモーションにし色相を赤に振ってみたりと、ライブのダイナミズムを伝えるにあたって、やり過ぎず、飽きさせず、絶妙の編集である。日本ロック史上最高のライブ映像などとも言われるが、大げさではなくスタジアムライブという一つの様式において最高級の作品だろう。ラストの遮断機まで観た人なら誰しも賛同してくれるはずだ。

※追記1
例に漏れずトム・ウェイツの「Downtown Train」やルー・リード「ライブ・イン・イタリー」など聴いております。ロバート・クワイン追悼。

※追記2
時の輪 in da T.M.Pより拙作「anfang」についてトラックバックをもらいました。mikaihooさん、ありがとう!